ターゲットユーザー:陸上部中・長距離ブロックで1500mの記録更新を狙っている男子学生
1500mで記録更新をしたいけど、レースではいつも実力を出せていない気がする。レースでは周りに流されてしまって、後悔することが多い。あなたもそうではないでしょうか。1500mの醍醐味は周りとの駆け引きにあります。だからこそ、スタートしてみないとレース展開が分からず、何が何だか分からないうちに終わってしまうことも良くありますよね。
では、あなたがレースで実力を出し切るにはどうすればよいと思いますか?今回は記録更新に焦点をあて、あなたの実力を最大限に引き出すコツをお教えします。
1500メートルを最速タイムで走るためのペース配分の考え方
1500mを最も速く走るには、どのようなペース配分にすればよいのでしょうか。
最初から最後までイーブンペースを保つ
1500mを最速で走りたいのであれば、走り切れる速度ぎりぎりでイーブンペースで走ること。これがあなたの実力を最大限引き出せるペース配分です。スタートからラストまで、スピードを変えることなく走ります。ちょっと意外かもしれませんが、理論的にはこれが最もタイムを出せる走り方です。
世界記録もイーブンペースで達成された!
1500mの世界記録は1998年から破られていません。ヒシャム・エルゲルージが出した3’26″00が世界最速タイムです。
世界記録のラップタイムは?
300m | 400m(700m) | 400m(1100m) | 400m(1500m) |
41秒 | 56秒(1分31秒) | 56秒(2分27秒) | 53秒(3分20秒) |
ラスト1周のスパートがすごいですが、それまでは正確にイーブンペースで刻んでいますね。
ラスト400mの100mごとのラップタイムは?
100m(1200m) | 100m(1300m) | 100m(1400m) | 100m(1500m) |
13秒 | 13秒 | 13秒 | 14秒 |
ラストスパートでも、一時的にペースを上げたのではなく、400m全体で上がっていることが分かります。
勝つことと最速は違う
中距離種目においては、勝つことと最速は異なります。1500mの多くのレースでは、最初とラストでスピードが上がると思いますが、このスピード変動は勝つための駆け引きにすぎません。エルゲルージが世界記録を出したレースでも、勝つためにラストスパートをかけたと言えるでしょう。
それでも、エルゲルージの世界記録は、スピードの変化がラスト400mの1度だけになっています。このような走り方はなかなかできないものです。駆け引きを1度だけにすることで、自分の実力を効率よく発揮していると言えます。
自分のペースを維持しようとわかっていても、レースではうまくいかない
速く走るために駆け引きが必要ないとは言え、実際のレースではなかなか上手くいきませんよね。
自分のペースで一人旅は精神的に無理
周りのペースにある程度合わせないと精神的に辛くなることもありますよね。特に、ギリギリ付いていけるペースなのに、あえて付いていかないなんて、怖くて出来ないかもしれません。
無理して先頭に立つのも勇気がいる
周りがあまりにも遅いときは先頭に出ざるを得ませんが、ギリギリのスピードの中で先頭に出るのも勇気がいりますよね。雰囲気にのまれて、オーバーペースになっているのか、わからなくなってしまうものです。
自分より遅い人の後ろに付きたくない
スタートでコース取りをしないと自分より遅い人の後ろについてしまったり、ペースを乱されてしまいますよね。
レースで周りに振り回されない、動揺しないメンタルを手に入れるためにやるべき5つのこと
レースで速く走るにはどうすればよいのか。まずは、自分の実力を正確に把握することです。これにより、レースでたとえ一人旅になっても、精神的に動揺しないメンタルを手に入れることが出来ます。
- ベストタイムからラップタイムを割り出そう
- 自分のレース映像からラップタイムを確認しよう
- 目標タイムからラップタイムを割り出そう
- 300mの通過タイムを決めよう
- 400mごとのラップタイムを決めよう
ベストタイムからラップタイムを割り出そう
まずは、あなたのベストタイムを15で割って、100mのアベレージタイムを算出してみてください。これにより、自己記録を出すためのペース配分がはっきりとわかるはずです。
自分のレース映像からラップタイムを確認しよう
自分のレース映像はありますか?出来ればベストタイムが出たレースの映像があればベストです。自分のウォッチやマネージャーが計測した記録はおそらく400mごとのラップタイムだと思います。
ここでは映像を確認しながら、100mごとのラップタイムをとってみてください。アベレージタイムと比べ、実際はどのようなペース配分になっているかを確認します。
入りの100mが速すぎないか確認する
入りの100mはスピードが上がりがち。個人のスプリント力や持ちタイムによっても異なりますが、アベレージタイムよりも1秒以上速い場合はとばし過ぎの可能性があります。
後半で100mごとにタイムが落ちている場合は前半を抑える
後半に入って、100mごとにタイムが落ちているような場合は、実力以上にペースを上げている証拠です。アベレージに近づくように前半のペースを抑える必要があります。
ラスト400m以降が速すぎる場合は実力を出し切れていない
入りの100m同様に、個人のスプリント力や持ちタイムによっても異なりますが、ラスト400m以降でアベレージタイムよりも1秒以上速い区間がある場合は最後に力を残しすぎており、十分に実力を出し切れていない可能性があります。もう少し、ペースを上げる余力があるかもしれません。
ほとんどイーブンペースならスピード不足かも
あまりないと思いますが、この場合は周りのスピード変化に対応できていない可能性もあります。
自分で意識してイーブンペースにしようとしていないのに、このような結果になってしまっているとすれば、あなたは限界スピードを上げる練習をしたほうが良いかもしれません。
もし、意識してイーブンペースにしていて、走り切れていないと感じるのであれば、あなたは本気を出していないのかも?もう少しスピードアップする余力があります。
目標タイムからラップタイムを割り出そう
あなたの目標タイムでも100mのアベレージタイムを出してみてください。次回のレースでどんなラップタイムを刻めば良いかが見えてくるはずです。
300mの通過タイムを確認しよう
100mのアベレージタイムを3倍して、300mのラップタイムを決めましょう。ここでいう300mとは、入りの300mです。
1500mのコース取りは100mでほぼ確定し、300m付近ではほとんどのレースで安定しています。入りの100mでペースが上下しても300mで帳尻が合わせられるにように、タイムを確認します。
400mのラップタイムを確認しよう
100mのアベレージタイムを4倍して、400mのラップタイムを決めましょう。だいたいこれくらいかな・・・、といった決め方をしてはいけません。正確なタイムを算出しましょう。
1500mレースで最速タイムを出すコツ
ここまでの準備で、実力を出し切る準備の8割はできています。次は、レースの駆け引きに対応しながら、自分の実力を出し切るコツを紹介します。
- 短距離に学ぶポジショニングのベストタイミング
- 100mのラップタイムを確認する
- 300mのラップタイムを確認する
- ラスト400mまではラップタイムだけを信用する
- ラスト400m以降にラストスパートを
- ラスト200mは全力を出し切る
短距離に学ぶポジショニングのベストタイミング
1500mでは最初のポジショニングがレースを大きく左右します。イーブンペースが良いとはいえ、理想のペースよりも遅い人や集団に付いてしまうと、レース全体に影響が出てしまいます。スタートの瞬間からオープンレーンになる1500mでは、ほぼ全力で走りだす必要があります。では、どのタイミングで位置取りを確定させるのがベストなのでしょうか。
最初の60mは短距離走に近い
スタート位置にかかわらず、全力の走りは60mまでにしましょう。100m選手の走りを分析すると、速い選手・遅い選手に関係なく、最高速度に達するのは60m前後なのです。ですから、あなたが1500mのスタートを全力に近い力で走った時でも、最高時速に達するのは60m付近になるのです。
残りの40mは短距離選手のようには走れない
100mの選手は、残りの40mでスピードを維持するために、加速ゾーンとは異なる筋肉や技術をつかって走っています。あなたが60mまでで最高時速に達したとしても、それを維持する筋力や技術は、中距離選手のあなたには必要のないものなのです。
60mまでにポジションを決めよう
60m以降に予定したよりも速いペースを続ければ続けるほど、より体力は消耗していきます。もちろん、一度ペースをを緩めて再度加速するというのも体力を消耗することになります。そのため、60mまでにポジションを決めるのがベストです。
もちろん、60mまでにポジションを決められない場合もあります。その場合でも、コーナーに入る前のなるべく早い段階でポジションを決めましょう。早ければ早いほど、体力の消耗を防げます。
100mのラップタイムを確認してペースを整える
100m通過時にウォッチなどでラップを確認できるとベストです。ここで、目標のアベレージタイムとどれくらい開きがあるのかを確認しましょう。最初の100mの通過タイムは、レースによって変わってくることが多いので、300mでのラップタイムで帳尻が合うように残りの200mを走りましょう。
300mのラップタイムを確認してペースを整える
300m通過時に設定していたタイム通りに走れていればベストです。もし、設定タイムと実際のラップタイムがずれていたら、どうすればよいでしょうか。
設定よりも速いタイムだったら徐々に減速を
設定していた通過タイムよりも早かった場合、ペースは落としすぎないようにします。一度減速してしまうと、再度加速するときにエネルギーを余計に使ってしまいます。この場合は、次の400mのラップタイムが設定通りになるように、徐々に減速するようにします。
設定よりも遅いタイムでも取り返そうとしない
設定していた通過タイムよりも遅かった場合、次のラップタイムで取り返そうとしないようにします。レース内で加速・減速を繰り返すことで、エネルギーを余計に使ってしまいます。この場合は、次の400mのラップタイムが設定通りになるように、徐々に加速するようにします。
ラスト400mまではラップタイムだけを信用する
300mから1100mでは、ラップタイムだけを信用するようにしましょう。設定通りであれば、もっとも実力を出し切れるペースで走っています。自分のペースを維持することに集中しましょう。
集団の中で遅すぎると感じたらすぐに対応しましょう。逆に速すぎると感じたら、無理についていかないことが大切です。計画通りのペースを維持できれば、記録は更新できるはずです。
ラスト400m以降にラストスパートを
設定通りに走れているということは、記録更新を狙った実力ギリギリのタイム設定で走っているということです。ですので、ラスト400mで余力はなくなっています。
そのままの意識だと必ず最後はペースダウンします。ラストの鐘が鳴ると、周りも一斉にペースアップします。周りの流れにのって、自分もペースを上げるつもりで走りましょう。
ラスト200mは全力を出し切る
1500mのラスト200mは精神力の見せ所です。とにかく諦めずに走り切ることが大切です。アドバイスするとすれば、ウォッチは見ないようにしましょう。記録更新するという強い気持が大切です。
まとめ
今回は1500mでベスト記録を出すというテーマで、そのコツをご紹介しました。記録で伸び悩んでいるのであれば、まずは自分の100mごとのラップタイムを分析してみてください。
100mのアベレージタイムと、実際のラップタイムに差があればあるほど、あなたはもっと速くなれる余地があります。
今回紹介した方法は、1500mで勝つための方法ではありません。勝つことと、最速タイムを出すことは違うからです。
しかし、あなたが自分の能力を限界まで引き出すことで、今よりも速いタイムを出すことが出来れば、きっと勝つための自信に繋がっていくはずです。
maasa
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