緩急をつけて走るトレーニング、ファルトレク走について!

ランニング知識

皆さんは日々のトレーニングのバリエーションをどれくらい持たれていますか?

中にはバリエーションが少なく、練習に飽きてきた方もいらっしゃるでしょう。

そんな方に今回は日本ではあまり馴染みのない「ファルトレク走」というトレーニングについて説明したいと思います。アフリカのケニアのマラソントレーニングでは主流とも呼ばれる練習方法で多くの有名ランナーも取り組まれています。

この練習方法を取り入れれば、トレーニングのバリエーションが増え、走力アップにもつながります。

ファルトレク走とは

  1. ファルトレク走の概要
  2. インターバルトレーニングとの違い
  3. ファルトレク走の注意点

ファルトレク走の概要

ファルトレク走とは簡単にいうと緩急をつけて走るトレーニングです。例えば、1分間速いペースで走って、1分間遅いペースで走ることを30~60分続けます。

日本ではあまり馴染みのないトレーニングですが、マラソン大国ケニアの練習では広く取り入れられています。ケニアのファルトレク走ではクロスカントリーのような起伏の激しく、足場があまり良くないところを走ることが多いです。

インターバルトレーニングとの違い

ペース設定

一見、インターバルトレーニングと変わらないのではないかと思われがちなファルトレク走ですが、明らかな違いはペース設定があるかないかということです。

インターバルトレーニングではあらかじめペースの設定があり、そのペースで走ることが求められます。

一方、ファルトレク走はきっちりしたペースの設定がありません。ペースが速いか遅いかというだいたいの枠組みが決まっているだけで、自分の気分や疲労度に合わせてペースを自在に変えることができます

そもそも「ファルトレク」とはスウェーデン語で「speed play(速さ遊び)」という意味です。語源からも分かるようにインターバルトレーニングのような堅苦しさはありません。

時間

通常のインターバルトレーニングでは時間がかかっても30分程度では終わると思います。ペース設定が厳しい分なかなか長い時間行うことは難しいです。

しかし、ファルトレク走は30~60分のインターバルトレーニングの時間より遥かに長い時間行うことが多いです。

インターバルトレーニングのペース設定が緩くなり、時間が伸びたのがファルトレク走と言えます

ファルトレク走の注意点

ウォーミングアップは入念に

ペース変化をつけるファルトレク走では特に遅いペースから速いペースに移行する際に足がつってしまう可能性があります。

これを防ぐためにはウォーミングアップを入念に行い、筋肉を温めた状態で行うと良いです。足がつってしまうのを防ぐためには水分補給も重要です。

メリハリはつける

ファルトレク走で速いペースと遅いペースの差がほとんどないのは効果が薄れてしまいます。スピードの変化がなさすぎるのは普通のジョグとほとんど変わらなくなってしまいます。

しかし、ペースの変化をつけるのが難しいランナーもいらっしゃるのではないでしょうか?

1分間速いペースで走って1分間遅いペースで走るのを1セットとします。1セット激しくペース変化をつけた後、少し休憩で1セット緩やかなペース変化にするなどして、負荷を減らすことができます

足元に気をつける

ファルトレク走を足場が悪い場所で行う際は、足元に気をつける必要があります。

万一ケガをしてしまったときに応急処置ができるようにばんそうこうをポケットに入れておくなどすると良いでしょう。

さらに、大ケガをしてしまった際には動けないかもしれません。そのため、1人ではなく、集団で行うことを勧めます。集団であれば、他の人が助けたり、連絡をとることができます。

クールダウンも入念に

ウォーミングアップに加え、クールダウンも入念に行う必要があります。

インターバルトレーニングと比べ、ペース設定は緩いですが、時間が長くなっており、インターバルトレーニング同様の疲労が溜まります。

筋肉が熱を持っている場合はアイシングを行い、その後はストレッチやマッサージなどで疲労をしっかりと取り除きましょう

ファルトレク走の利点

  1. スタミナがつく
  2. スピードがつく
  3. ペース変化に対応できる
  4. 短時間での回復力が身につく
  5. こなしやすい

スタミナがつく

ファルトレク走は30~60分ペース変化はありながらも走り続けるのでスタミナがつきます。最初は30分から始めて、徐々に時間を伸ばしていくことで効率的にスタミナをつけることができます

スピードがつく

ファルトレク走は遅いペースを挟みながら速いペースで走るので、スピードもつきます。

間を空けてでいいので全力疾走で走る時間を設けることでさらなるスピードアップにつながります。

ペースや起伏変化に対応できる

ファルトレク走はペースを変化させながら走るトレーニングですので、ペース変化に対応できるようになります。

練習や大会でペースアップやペースダウンは頻繁に起こります。それに対応できるかできないかが勝負に勝てる鍵になります。

また、起伏のある所でファルトレク走を行うことで、起伏の変化にも対応できるようになります。

上り坂や下り坂を走る際のフォームのコツというものはありますが、実際に走って自分で試行錯誤してみることで起伏変化を武器にすることができます

短時間での回復力が身につく

ファルトレク走は速いペースの後、遅いペースで走る時間がありますが、そう長くはありません。

筋肉は疲労が溜まると乳酸という物質が蓄積します。この物質が蓄積し過ぎることは疲労の原因となります。

しかし、この乳酸は休んだり、ペースを落としたりすることでエネルギー物質に変わるのです

速いペースで乳酸を溜めて、遅いペースで乳酸をエネルギー物質に変えることを繰り返すことで短時間での回復力が身につきます。こうすることで、疲れにくい体を作ることができます。

こなしやすい

ファルトレク走はペースを自分で自在にコントロールできるという点で練習を最後までこなしやすいです。

インターバルトレーニングやペース走では設定ペースで走れず、途中でやめてしまうこともあると思います。

しかし、ファルトレク走ではきつくなったらペースを落とせば良いんです。そして、回復したらまたペースを上げることも可能です。

このようなことが可能な点で他のポイント練習に比べて非常にこなしやすいので初心者にもおすすめです。

ファルトレク走の例

  1. エリウド・キプチョゲ選手の例
  2. ウィルソン・キプサング選手の例
  3. 一般ランナー向けの例

エリウド・キプチョゲ選手の例

エリウドエリウド・キプチョゲ選手はマラソン世界記録保持者です。そのタイムは驚異的の2時間1分39秒です。

キプチョゲ選手はナイキ主催の「breaking2」というイベントでマラソン2時間切りを目指されました。多数のペースメーカーによる引っ張りと風よけ、フラットなコースで非公式ではありますが、2時間0分25秒という圧巻の走りでゴールされました。

そんなキプチョゲ選手もファルトレク走を週1回で行われています。こんな感じです。

•10分(3:00/km)×4回、間スロージョグ2:00、(下り坂2:45~50/km,上り3:10~15/km)

•1分(2:45/km)×30回、間ジョグ1:00

•3分レペ+1分ジョグ(セットで3:00/km)×18セット

見てもらうと分かるように様々なバリエーションがありますね。バリエーションを増やすことで飽きがこなくなります。

ウィルソン・キプサング選手の例

次にウィルソン・キプサング選手の例を紹介します。

キプサング選手も過去に世界記録を樹立したことがあり、2時間3分台を何度もマークされているとても有名なマラソンランナーです。自己ベストは2016年にベルリンマラソンでマークした2時間3分13秒です。

そんなキプサング選手も練習にファルトレク走を取り入れています。

•2分疾走、1分ジョグ×20回

•1分疾走、1分ジョグ×20+30秒疾走、30ジョグジョグ×20

かなり高強度なことが見て分かります。

一般ランナー向けの例

上の2人はプロマラソンランナーですので、一般ランナー向けのファルトレク走を紹介します。

・1分疾走、1分ジョグ×15~30セット(奇数セットでは激しいペース変化、偶数セットでは緩いペース変化、疲れてきたら緩いペース変化で回復も可)

•3分疾走、3分ジョグ×5~10セット(要領は上と同じ)

これはあくまで例ですので個人の走力に合わせて、ペースや本数、時間を調整してください

まとめ

以上、緩急をつけて走るトレーニングであるファルトレク走について紹介しました。

これでトレーニングのバリエーションも増えたと思います。各自の走力に合わせて、ペースや時間、本数を自由に変えられるところがこの練習の魅力です。

また、インターバルトレーニングよりもこなしやすいことから初心者で普段よりきついトレーニングをやりたい人にもおすすめです。

ファルトレク走を練習に取り入れて、ぜひ練習や大会で良い結果を出してください!