ウルトラマラソンをゴールした瞬間、どれだけのランナーが計画通りに走りきった!という満足感を持っているでしょうか。大半は、たどり着いた安心感は持っているとしても、50キロから急にスピードダウンした、もっと○○の練習をしておけばよかった、○○が痛くなってどうしようもなかった、最後は歩いてしまった、、、と反省をするでしょう。
そうならない、自分の計画通りの満足したレース展開をするための練習法をお伝えします。
長く走る練習だけではダメ
長い距離を想定スピードで練習をしておけばウルトラマラソンは大丈夫と考えがちです。確かに本番さながらの距離を走っておくことは大切です。身体は長く走ることを覚え、苦しさをインプットできるという効果があります。
行った方が良いのは事実です。ただし、それだけでは足りないです。
3パターンの練習を組み入れる
練習は3パターンを実施します。3パターンの練習は長時間行うものもあれば、短時間で終了するものもあります。忙しい日常生活のなかで、その練習をどのように組み入れるかというマネジメント能力も求められます。
3パターンの練習
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高強度トレーニング(無酸素ゾーン)
- 中強度トレーニング(LTゾーン)
- 低強度トレーニング(有酸素ゾーン)
3パータンは心拍数で区分けする
心拍数が高まると徐々に筋肉に乳酸がたまっていきます。そして、ある地点を境に、乳酸のたまり方が変化します。ある地点を基に3パターンに区分けます。
急激に乳酸が溜まる「高強度トレーニング(無酸素ゾーン)」
苦しい練習をすると心臓はドキドキして、呼吸は荒くなる無酸素ゾーンに突入します。無酸素ゾーンでは体内で「糖」を優先的に使います。ドンドンと糖が使われるために「乳酸」が急ピッチで生成されていきます。体の中には「乳酸」がたまると、身体が重くなっていきます。
運動を続けられる限界ギリギリで行う練習です。
苦しくなりだす領域「中強度トレーニング(LTゾーン)」
強度が徐々に高まると、身体の中で乳酸濃度が変化します。急増する領域を乳酸性閾値(LT)と呼びます。30~60分続けられる、続けた後にオールアウト(運動が続けられなくなる状態)するような練習です。
ちみなに、箱根をねらう大学生ランナーや実業団ランナーはLTゾーンをもっとも重視して時間を割いて練習しています。
徐々に乳酸貯まる「低強度トレーニング(有酸素ゾーン)」
会話をしたり、周りの環境を意識できる運動強度の練習です。体内では緩やかに乳酸がたまっていきます。糖よりも脂肪が優先的に使われていきます。ウルトラマラソンを走る時は、この領域で目標タイムを意識した走りを続られることを目指します。
もしも、LTゾーンに入ってしまったら、ペースが速すぎるのでスピードダウンをしなければなりません。
高強度トレーニングの練習メニュー
無酸素に近い運動です。ハーハーゼーゼーの状態で20分継続する練習です。メニューは、「坂ダッシュ」や「階段ダッシュ」が有効です。限界に近い状態で足を動かし続けることで「脚持久力」が高まります。結果、効率的に長く速く走るパワーを養うことになります。
ちみなに、トップ選手と一般ランナーとは「脚持久力」が違います。同じペースで走っていても、トップ選手は80%の力、一般ランナーはトップ選手に追いつくためには100%以上を出力しなければなりません。
ウルトラマラソンでは、ゆっくりスピードであっても、どれだけ余裕度を持って走ることができるかが、満足した走りをする上で重要です。
低強度トレーニングの練習メニュー
糖を使わずに体脂肪燃焼をあげるためのトレーニングです。本番レース1ヶ月前までは、最低でも月1回、6~8時間走り続ける練習をいれます。この時のポイントは「距離ではなく時間」です。
自分がこのペースなら長い時間を走り続けられる、と意識できるスピードを見つけ出します。
どんなに速いトップ選手でも5時間ぐらい経過するとだるくなってきます。そこからしっかりと押していける力もつきます。
低強度の練習でウルトラマラソンで必要な走力のベースを築きます。
中強度トレーニングの練習メニュー
昨今、東アジアのランナーがオリンピックや世界大会で上位を席巻しています。日本人と心肺機能や筋力はそれほど変わらないです。違いは何か? 「ミトコンドリア数」ではないか? と言われています。ミトコンドリアは酸素を取り込むことで筋肉を動かエネルギーになります。数が増えればスピードの持久力が向上します。
ただし、今の科学ではミトコンドリアを増やすことはできません。唯一分かっている方法が中強度、つまりLTゾーンでの練習なのです。
LTゾーンの練習は、先述した通り、30~60分続けられ、続けた後にオールアウトする強度です。ただし、自分の意志で苦しい領域で30分以上継続するのは、正直難しいでしょう。どうしても途中で気が緩み、頭の中でスピードを落とす言い訳を考え出してしまいます。
オススメなのは、スポーツジムにあるトレッドミルです。最初に機械の設定をしてスタートボタンを押せば、ストップボタンを押さない限りは強制的に走らされることになります。設定は傾斜をあげて角度は10~15%、スピードは時速7~9キロです。30分も続ければ、大量の汗が吹き出してくるはずです。まさに狙ったゾーンでの練習ができている証拠です。
3パターンの練習を融合させる
ご説明した3パターンの練習を1週間で実施するとこのようになります。パズルのように組み合わせて行います。
1週間の練習イメージ
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日曜日・・・6時間走※低強度
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月曜日・・・ほぐし走30分(疲労を取り除く)
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火曜日・・・階段ダッシュ20分※高強度
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水曜日・・・筋トレ&ストレッチ(メンテナンス)
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木曜日・・・トレッドミル30分※中強度
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金曜日・・・休足
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土曜日・・・ロード 60分間走※中強度
時間をとれない平日は高強度や中強度、そしてメンテナンスを行います。休日は長く身体を動かす低強度です。可能ならば、土日連続練習をします。ウルトラマラソン用の脚持久力が養われます。ただし、身体への負荷が強いので怪我には注意。
3パターンを組み合わせることで身体の負荷が分散されて怪我防止、意識の飽きを防ぐことにもなります。
まとめ
3パターンの練習を行えば、最高に満足できるレースが展開できる確率が高まります。3パターンにはそれぞれ特徴があるので、効果を理解し、何のために行う練習なのかを常に意識しましょう。
そこでオススメなのが、練習日誌をつけることです。練習計画、実施した内容、そしてコメントとして練習後の感想、課題などを書き込みましょう。練習実績が俯瞰できるので、上手くいっている点、欠けている点が一目で把握できます。レース前日に読み返せば、これだけの練習をしてきたんだ!と自信も湧いてくるでしょう。
「やるかやらないか」を決めるのはあなたです。
【参考文献】
鏑木毅(著)『鏑木メソッド』山と渓谷社
雑誌『ランニングマガジンクリール 2018年 07 月号 特集:ウルトラマラソン攻略法』クリール編集部
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