トレイルラン初心者が揃えるべき持ち物と最低限のマナー

ランニング知識

これからトレイルランを始めてみよう、という方は多いのではないでしょうか。

始めてみたいけど、どんなものが必要なのか、何を買い揃えたらよいのかわからない、という方もいると思います。

そんな方のために、まずはトレイルランの魅力やメリットから考えていこうと思います。

「トレイル」とは、山や森の中にある、舗装されていない登山道や獣道、林道のことです。トレイルを自分の脚で走り、歩き、登り、下るスポーツがトレイルランです。

最近は各地でトレイルランの大会が盛んに開催されるようになりました。愛好者も、老若男女問わず増えてきているようです。

トレイルランの魅力

  1. 楽しいトレイルラン
  2. 苦しいトレイルラン
  3. トレーニングとしてのトレイルラン

楽しいトレイルラン

さて、人気が高まっているトレイルラン、その魅力は何なのでしょうか。

まず何をおいても、その楽しさ、快感です。

木々の間をぬって、ジェットコースターのような乱高下のコースを全力で駆け抜けるスリル感。

九十九折で、頭上果てしなく続く急勾配を登り切り、眼前に圧倒的な眺望が開けた時の達成感。

右も左も切れ落ちた、大いなる天空の尾根筋をまるで神のような視点で歩く制圧感。

狭いトレイルで、獲物を追う野獣のように、ライバルと抜きつ抜かれつを繰り返すワクワク感。

地図をにらみながら、独自のコースを刻み、新しいルートを発掘したときの感動。何もかもが、マラソンでは味わえない魅力です。

日本のトレイルランの名実ともに第一人者であり、2009年のUTMB100マイルで日本人最高の3位に入ったレジェンド・鏑木毅さんはこう仰っています。

「ロードはdoing、トレランはそれに加えbeing」

引用元:Nunber Do summer2012

これこそ、トレイルランの魅力を最も端的に表現した言葉かもしれません。

フルマラソンは目標タイムから割り出すキロごとのペースを頭に刻み、そのペースを守って走るという緻密な作業を42回繰り返さなければなりません。

メンタル面で相当のプレッシャーがあります。トレイルランには、少なくともそのプレッシャーは存在しません。

ただ自然のまま、気の向くまま、身体の求めるまま、走ればよいのです。急な登りできついと思ったら歩けばよいのです。美しい光景に出会えば、立ち止まればよいのです。

季節ごとにトレイルは私たちに様々な顔を見せてくれます。緑があり、木々があり、風があり、花があり、雪があり、香りがあります。その時々に刻まれた、息をのむほどの美しさがトレイルにはあるのです。

そこに身を置き、汗を光らせて力いっぱい走る、これこそトレイルランの魅力といえます。

苦しいトレイルラン

また一方で、トレイルランは苦しいものです。大会によっては100キロ以上、30時間40時間走り続けるレースもあります。

幻覚を見たり、身体や意識に異常を感じたりする話もよく聞きます。

苦しみに自分の身を置きたい、苦しみに浸りたい。マゾという意味ではなく、自分の苦悩、疲労の限界を知ってみたい。

限界の向こう側に何があるのか、限界の向こう側で自分は何を見るのか。それを探求したい、という本来的な欲望を人間は持っているのでしょう。

その一端を叶えてくれるのも、トレイルランなのかもしれません。

トレーニングとしてのトレイルラン

トレイルは不整地であり、急な角度で上ったり下ったり曲がったりします。石、岩、枝、泥、砂があります。

トレイルランでは、身体や足がさまざまな方向から衝撃を受けます。

継続してトレイルを走ることにより、身体や足は自然にその衝撃に耐え得る強さと柔軟性を持つようになり、前への推進力に変えられるようになっていきます。

急勾配の登りでは、心肺も激しく鍛えられるでしょう。

トレイルランは、ロードランでの自己記録短縮のための効率的なトレーニングになると考えられます。

トレイルランに必要な持ち物

持ち物を考える時、ロードランとの違いを考えると、必然的にトレイルランに必要な持ち物が見えてきます。

また、その日の練習の行程によっても変わってきます。

自宅から山へ行き、そのまま自宅へ帰ってくるのならそれほど荷物は多くなりません。

近くに山がない方は、登山口までのアプローチとして、電車を使う場合もあると思います。風邪などを避けるため、帰りの電車に乗る前に銭湯に寄ることをおすすめします。

着替えは行きの電車を下りた駅のコインロッカーに預ければ、トレイルラン中の荷物を軽減できます。

慣れてくれば、着替えもすべて背負って走ることも苦にならなくなるでしょう。

下記にまとめたのは、着替えとは別に、ラン中に常に身に着けておくべき持ち物です。

  1. ウェア、防寒具
  2. 補給
  3. ライト
  4. シューズ
  5. ザック
  6. 地図
  7. 救急キット

ウェア、防寒具

急な天候の変化、気温の下落に対応するために、重ね着するジャケットなどのウェア、防寒具が必要です。

夏でも、ひと通り汗をかいた後の夕方など、想定を絶する寒さに襲われる場合があります。

雨や強い風などの対策に、ゴアテックス素材のジャケットやレインウェアは最低1枚持っておくべきしょう。

トレイルランや登山用のジャケットは、どれも軽くかさばらない工夫がされており、コンパクトにザックの中に収納しておくことができます。

また、万が一の事情で動けなくなった場合や、休息時などに便利なのがエマージェンシートです。

価格は500円程度、ザックに一枚放り込んでおけば安心です。

補給

山の中にコンビニはありません。補給のための水と食料が必要です。

万が一の道間違いや迷いなどで、想定より下山が遅くなることは絶対にあり得ます。

そのため下山予定時間から大幅に遅れ、町に降りる前に暗くなってしまう、なんてことも考えられます。

食料は、コンビニでも買えるチョコやナッツ、菓子パンなど、ふだん食べ慣れているもので十分です。

特にナッツ類は、栄養があるだけでなく、硬いものを噛み砕くことによる満足感や眠気の防止効果が期待できます。

トレイルレースなどでは、たいていの選手は、エネルギー効率と携帯性を高めたジェルを持って走ります。

初心者は、まずはジェルの味に慣れる必要があるかもしれません。

ジェルの味が苦手という方にお勧めなのが、ハチミツをメインの材料としたジェルです。ハニースティンガーやハニーアクションなど、スポーツショップやネットで買うことができます。

ハチミツは単糖類で、体への吸収が非常にスムーズであるため、初心者がジェルを消化する際に感じる違和感は比較的少ないと言えます。

補給物は個人による好き嫌いがありますので、いろいろなものを試し、自分に合う好きな味のものを見つけることも、トレイルランの楽しみと言えます。

また、水はハイドレーションに入れる人も多いですが、持ってない人はペットボトルで十分です。

初心者がハイドレーションを使うと、残量がわからないため、水切れで焦ることもあり得ます。

立ち止まって、ゆっくりペットボトルの蓋を開けて飲むことは、ちょうど良い気分転換にもなります。

ライト

どんなに早い時間に下山する計画を立てたとしても、絶対に必要なものがライトです。

補給の項目でも述べましたが、山では不測の事態が大いに起こり得ます。

もし持ってくるのを忘れたことに気づいたら、その日はもうトレイルに入るのを止めるべきです。

そのくらいのレベルで、ライトは必携品です。できれば、装着型と手持ち型の2種は用意しておいた方が良いでしょう。

言うまでもないことですが、乾電池。またその予備も忘れずに。

シューズ

トレイルラン用シューズには、ロード用シューズとの違いが2つあります。1つは滑りを防ぐソール、もう1つは岩や枝に足をぶつけた時の怪我を防ぐアッパーの頑丈さです。

そんなにトレイルは滑るのかと疑問に思われる方も多いでしょう。

本当に滑ります。登りより下りが滑ります。砂地、泥、濡れた岩は特に滑りますが、一番滑るのは何と言っても濡れた木の幹、枝です。

踏む方向によっては、あっという間もなく身体全体が持っていかれます。

滑りを防ぐためのソールの凹凸パターンにはいろいろな種類があります。

ランニングイベントや大会によっては、シューズの試し履きができるケースもありますので、自分に合うパターンを持ったシューズを探してみると良いでしょう。

また、荒れたトレイルでは岩や枝に何十回と靴のアッパーをぶつけてしまうことでしょう。

トレイルラン用シューズなら、アッパーに使われる頑丈な素材により、怪我を防ぐことができます。

一番痛いのは、片足で落ちている枝を踏み、もう片足でその踏まれて固定された枝の先にアッパーを刺してしまう時です。

何百何千歩と走っていると、こんな冗談のような現象が本当に起きてしまうのです。

そんな事態のためにも、自分の足の大きさと形に合う、しっかりしたトレイルラン用シューズを選んでください。

ザック

これらの必携品を入れるザックは必要です。広い荷室を持つだけでなく、数個のポケットを配置することで、走りながらでもさまざまなアイテムを出し入れできる工夫がされています。

また、トレイルラン用のザックは、揺れない工夫がされており、ベスト型はその代表です。

ベスト型ザックは、体に密着させることで揺れないだけでなく、ハーネスにボトルポーチを備えることで、身体の前後の荷重バランスを取ってます。

欠点は、比較的価格が高いこと。

初めて買う人は、ベスト型でなくても良いですが、普通の形状のザックでも、胸と腰の最低2ヶ所、身体の前でベルトで留める機能があれば十分です。

それだけで、ザックが揺れない快適なトレイルランを楽しむことができるでしょう。

地図

今はスマホでGPS機能のついた地図アプリがたくさん使えるので、自分が使いやすいアプリをダウンロードしておけば十分です。

万一のスマホの電源切れのために、紙の地図も持っておけば完璧です。

多くの地図には、ルートの標準所要時間の表記があります。

中級以上のランナーになれば、標準所要要時間の7割や8割などで計画しますが、初心者のうちは、余裕をもって標準所要時間通りの計画を立てておくべきです。

救急キット

あれば良いものです。

足首などひねった場合の固定用テーピングテープ、虫刺され薬、ポイズンリムーバーがあればよいでしょう。虫避けには、ハッカがおすすめです。体臭予防にもなります。

また、万一のケガのために消毒液もあると便利ですが、ケガをした場合はまず消毒液の前に、新鮮かつ大量の真水で幹部を十分洗い流すことが必要です。

さて、レースに出ようと考えている方は、知っておくべきことですが、これらの持ち物については、大会によっては「必携品」となります。

必携品というのは、「これらを持っていないランナーは参加を認めない」という高いレベルでの意味です。

スタート前、レースの途中などで、非常に厳密な必携品チェックが行われます。

数年前、東京で行われたある有名なトレイルランの大会で、2位以下に大差をつけてゴールした女性選手が、必携品不足のため失格になったケースがありました。

その女性は、海外の大会でも何度も優勝している、トップレベルの実力を持つ選手なのです。

それほどトレイルランの大会においては、必携品は重要視されます。場合によっては、生死にも関わることだからです。

トレイルランのマナー

  1. 最低限の義務
  2. 譲り合い
  3. イヤホンは避ける

最低限の義務

挨拶をする、ごみを捨てない、花木を採らない、道の真ん中で休憩しない、というマナーは、ランナーかどうかの問題ではなく、人として最低限必要な義務です。

譲り合い

どんなに走りやすい路面であったとしても、もし前方からハイカーが歩いてきたら、走るのを止めて歩いてください。

山を歩くハイカーにとって、前方から人間が「走って」くることは、私たちが想像する以上の恐ろしさがあると言います。

狭い道幅の場合は、登り下りに関係なく、ランナーの方から先に止まって、道を譲ってください。

斜面を横切るトラバースの道では、可能であれば谷側に寄って、道を譲ってください。

ハイカーには高齢者もおられます。また目や耳や身体がご不自由な方もおられるでしょう。

力のあるトレイルランナーの方から、「積極的な譲り」の精神を持つようにしましょう。

イヤホンは避ける

イヤホンで耳をふさいで、音楽やラジオを聴くことはやめてください。

ほかのランナー、ハイカーとのすれ違いや追い抜きの際に、音が聞こえないのは非常に危険です。

それだけでなく、クマや蜂など危険生物の接近に気が付かない恐れもあります。イヤホン使用は大会によっては、失格の対象となります。

何より、せっかく豊かな自然に囲まれた山の中で、風の音や鳥の声や水のせせらぎを聞かないで過ごすのは、非常にもったいないことです。

まとめ

以上、これからトレイルランを始めてみよう、という方に向けて、持ち物に関することを中心に、知っておいていただきたいことをまとめました。

山では一歩間違えると死につながる危険性があります。

その危険を少しでも軽減するために、何が必要なのかを考えることが大事です。

それが分かれば、あなたにとってトレイルランは、かけがえのない素晴らしい体験となるでしょう。

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