2009年に発刊され全米ベストセラーになった「BORN TO RUN」を読んだことがありますか?ネット書店で「ランニング」と検索するとオススメ本として出てくるはずです。著者はダイエット目的で走りはじめ、四苦八苦する中で、走る民族「タラウマラ族」を知るのです。タラウマラ族の裸足で走り回る様子をみて、怪我をしにくい走り方のヒントを見つけていくストーリーを基軸に構成されています。
この本に影響されて裸足のランナーが増えてきました。日本でも日本ベアフットランニング協会が設立され、愛好者が増えています。今回は、裸足で走る「ベアフットランニング」についてお伝えします。
ベアフットランニングとは
裸足もしくは素足に近いシューズを履いて走ることをいいます。
日本では靴を履くことが当たり前ですが、世界ではまだまだ裸足で生活している人たちが大勢います。走る時はシューズを履かなければならないと思いがちですが、本来脚には、走った時の襲撃吸収システムやスピードをあげるためのアクセル機能が備わっています。
レオナルド・ダ・ヴィンチが、人間工学上で脚は最大の傑作であり、最高の芸術作品だと言っていた事は有名です。26個の骨が組み合わせれ、毎日数万歩の移動にも耐えうるタフさを持ち合わせています。
流行りの厚底シューズ
一方で最近は厚底シューズが大流行です。マラソン大会に行くと、先頭・中盤・後方のどこを走るランナーも履いています。着地の衝撃を吸収してくれる、自然とできる前傾姿勢が脚を前に出してくれる、ソールに使われている素材の反発力で楽に走れる、などがセールストークです。
しかし、それは走るための基本動作ができていることが絶対条件です。できていないと怪我につながります。ちみなに、基本動作を身につけるのにベアフットランニングはとても有効です。
ベアフットランニングの効果
1. 怪我をしにくくなる
裸足で走ると基本動作が身につきます。一般的に走って怪我をするのはカカト着地が原因。カカト着地は、地面に角度をつけて接地します。着地するたびに後方にブレーキがかかり、衝撃が膝の負担になります。
ベアフットランニングは自然と足裏全面のフラット着地になります。着地衝撃は脚から背骨を通じて頭上に抜けていくので、膝の負担はほとんどかかりません。
2. 走りの効率がよくなる
ランニングシューズを履くとそれなりの距離を、それなりのスピードで走れてしまいます。それはシューズの性能が自分の限りあるパワーをサポートしてくれるからです。パワーが売り切れた途端に、脚は止まります。
ベアフットランニングは脚の筋肉の他に全身を総動員します。腰の回転、体幹部、腕、肩甲骨などあらゆるパーツが走るために連動します。筋肉への負担も分散されるので長く走ることができるようになります。
3. フォームがよくなる
ランニングシューズを履いたカカト着地だと衝撃がフクラハギ、太ももに直撃します。耐えるために重量挙げ選手のようなモリモリの筋肉がついていきます。走ると脚が太くなる、と言われる所以です。
ベアフットランニングはフラット着地なので、スッと足元まで伸びた美脚を作ります。
姿勢に関しても、裸足で走ると地面からの衝撃吸収を上に逃がすために地面に対して垂直になります。腰が起き、胸が開き、背筋が伸び、首筋もピンと立ちます。今までの猫背で腰が曲がったフォームから変身します。
4. 記録が伸びる
カカト着地で走っていると一歩踏み出す度に、ブレーキがかかります。加速、減速、加速、減速を足運び毎にやっているのです。
ベアフットランニングはフラット着地です。テレビドラマで話題になった、母子球付近で蹴り出して着地するミッドフット走法が自然と身につきます(もっと足先の先端を使うとフォアフット走法)。
イメージは、つまづきながら走る意識を持つと前傾姿勢が作られます。すると、ブレーキ要素がなくなるので、信じられないぐらい楽に走れます。
ベアフットランニングはこんなヒトにオススメ
- 怪我に悩まされ続けているヒト
- 長い距離を走るのが苦手なヒト
- 記録が伸びないヒト
- ダイエットしたいヒト(スタイルを良くしたいヒト)
ベアフットランニングのはじめ方
1. ベアフットシューズを履く
いきなり裸足で走ると怪我をするので、まずはベアフットシューズを履きましょう。ランニングシューズと異なりソールが薄く、とても柔らかいです。大工さんが履く足袋に近いです。着地イメージも素足に近く地面の凹凸や温度や質感を感じることができます。
代表的なベアフットシューズ
そして、慣れてきたらワレーチに挑戦です。ワラーチとはランニング用のサンダルです。パッと見はこれで走れるのか?と感じてしまいます。
「BORN TO RUN」に登場するアメリカ先住民「タラウマラ族」が今でも履いています。タラウマラ族は街から離れた山岳地帯に住んでいます。移動のために長い距離でも走れるワラーチを昔から使っていました。
履いてみると軽さと足裏に吸い付くような履き心地に驚くと思います。
ワラーチで有名ブランド
2. 短い距離を走ってみる
ベアフットシューズは機能を削ぎ落としているので、脚を保護する要素はほとんど無いです。
まずは、近所のアスファルトを軽くジョキングしてみましょう。今までの走る感覚とは全く違うと思います。着地の衝撃、脚の運び方、蹴り出し方など新鮮に感じるはずです。
これが本来の走り方なのです。
3. 裸足で走ってみる
次は裸足に挑戦ですが、いきなりアスファルトを走ると怪我をする可能性が高いです。
足元が柔らかい芝生や砂浜を走ってみます。5本の指ががしっかりと大地をとらえるのが分かります。地面をつかんで走る感覚があれば少しずつ慣れてきている証拠です。
4. 動画を撮る
裸足でアスファルトを走ってみます。最初は、石ころや木枝などが痛く、恐る恐る脚をつくと思います。衝撃は想像より大きいでしょう。
その様子をビデオで撮影します。第三者目線でみると気付きがあります。上下動、左右差、上半身の使い方、イメージと違うはずです。
次にランニングシューズで走ってみてください。今までのカカト着地がフラット着地に変わっているはずです。
5. 裸足仲間をつくる
一人で裸足で走っているすれ違うヒトの視線が気になります。慣れてくるとなんて事はないですが、最初は恥ずかしいと思います。
そんな時は、ベアフットランニングのイベントに参加するのはいかがでしょうか。日本ベアフットランニング協会のウェブサイトに載っていますが、裸足愛好者がイベントを定期的に開催しています。
皆、最初から裸足で走っていた訳ではなく、理由があっての事。きっと共通の話題で盛りあがるでしょう。悩みを打ち明けてみたり、質問すると適切な返答がもらえる事でしょう。
ベアフットランニングで気をつけること
しばらくはベアフットシューズを使ったり、裸足になったり、ランニングシューズを使ったり、と履き分けます。
ベアフットランニングは身体の使い方を学ぶには最高の方法ですが、一方で怪我のリスクも高いです。最初は5分、慣れてきたら10分、20分と徐々に時間を伸ばしていきます。いきなり長時間を走ることはやめましょう。
- やりすぎないこと
- 痛みを感じたらやめる
- 足元を選ぶ(芝生、土、ウッドチップ、アスファルトなど)
まとめ
ベアフットランニングをすると、人間が持っている体の使い方がわかり、本来の機能、眠っている力が使えるようになります。ただし、ランニングシューズのようなサポート無しで地面と接するので身体へのダメージも大きいです。最初は充分に注意をしましょう。
また、ランニングシューズの付き合い方が見えてきます。ベアフットランニングで全身を使って走るようになると、シューズが持っている機能をフルに引き出せるようになります。厚底シューズなら特徴の反発を利用できると成果も出るはずです。
どうですか?ベアフットランニングにトライしてみたくなりましたか?
簡単です、靴下とシューズを脱ぐだけです。と言っても、始める順番は守ってくださいね。
参考文献
- 高岡尚司著「ゼロベースランニング」
C-Gachio
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