市民マラソンでペースメーカーを利用するメリット、デメリット

ランニング知識

テレビのマラソン中継でペースメーカーが走っているのを見たことがある方は多いではないでしょうか。市民向けのフルマラソンでもペースメーカーが付く大会が多くなってきました。ペースメーカーは設定ゴールタイムに向けて一定のペースで走ってくれます。

ペースメーカー上手く利用すれば自分の走力以上のタイムが出ることもあります。逆にペースメーカーを使って失敗するケースもあります。ペースメーカーの特徴を知り、自分のレースタイプに合ったペースメーカー利用方法を選択してください。

上手くペースメーカーを使うことができれば、自分の目標タイムの達成に近づきます。

市民マラソンのペースメーカーとは

市民マラソンのペースメーカーとはどんなランナーで、どんなことを考えながら走っているのでしょうか。設定タイム4時間のペースメーカーを例に、市民マラソンのペースメーカーを見てみましょう。

  1. レース主催者が準備する
  2. 人数は一つの設定タイムに対して1~4人位
  3. 申告タイムに合わせたブロックからスタートする
  4. グロスタイムでペースメイクする
  5. 基本的にイーブンペースだがペースは速くなりがち
  6. 終盤はペースメーカーが分かれることがある

レース主催者が準備する

市民マラソンのペースメーカーはレース主催者が準備します。地元のランニングクラブなどに頼んで、設定ペースを余裕で走れるランナーにお願いすることが多いです。設定タイムが4時間のペースメーカーはフルマラソンを概ね3時間30分以内で走れる走力が必要です。

人数は一つの設定タイムに対して1~4人位

ペースメーカーが1人の場合もありますが、大きな大会はで一つの設定タイムに2~4人のペースメーカーがつきます。どんなに優秀なランナーでも突然のアクシデントで、レース途中で走れなくなることがあります。トイレに行きたくなることもあります。

ペースメーカーが複数いればお互いに安心して走れます。ペースメーカーの中にリーダー格の人がいてペース全体をコントロールされていると安定したペースメイクが出来ます。

申請タイムに合わせたブロックからスタートする

フルマラソンの当日、ランナーは申告タイム別にブロックに分かれて整列をしてスタートを待ちます。ペースメーカーも設定タイムに合わせたブロックからスタートします。設定タイム4時間のペースメーカーは目標タイムが4時間程度のブロックからスタートをします。

ペースメーカーは周りのランナーから認識しやすいように、目立つウエアやビブスを着ていることが多いです。遠くから目立つように帽子の上に風船をつけていることもあります。

グロスタイムでペースメイクをする

グロスタイムとはスタート号砲が鳴ってからランナーがゴールライン越えるまでのタイムです。グロスタイムに対してランナーがスタートラインを越えてからゴールラインを越えるまでのタイムをネットタイムと言います。

ペースメーカーはグロスタイムでペースメイクをします。参加者が多い大きな大会になるとスタート号砲がなってからスタートラインを超えるまでにロスタイムが発生します。設定ペース4時間のメーカーはロスタイム分を計算して、グロスタイム4時間でゴールするようにペースを作ります。

基本的にイーブンペースだがペースは速くなりがち

ペースメーカーはイーブンペースを心掛けます。1kmあたり5分40秒のペースで走れば4時間で42.195kmを走りきれます。ペースメーカーはこれにロスタイム計算してペースを考えます。例えばロスタイムが7分の場合、グロスタイム4時間でゴールするには3時間53分以内に42.195kmを走る計算になります。1kmあたり5分30秒のペースになります。

ペースメーカーは設定タイムを超えてはいけないというプレッシャーから、ペースが速くなりがちです。設定タイムに対して余裕があるランナーがペースメーカーになるので、よけいにペースが上がりがちになります。

終盤はペースメーカーが分かれることがある

1つの設定タイムに複数のペースメーカーがいる場合、中盤まではペースメーカーは一つの塊りで走ります。終盤になるとペースメーカーは3つ位に分かれることがあります

  • 設定ペースより余裕があるランナーを引っ張るペースメーカー
  • 設定時間通りに走るペースメーカー
  • 設定ペースより遅れ気味なランナーをフォローするペースメーカー

です。

ペースメーカーを利用するメリット

ペースメーカーを利用する最大のメリットは、ペースメーカーに付いて行けば目標タイムをクリアできるということですランニングは一人で走るより人に付いていった方が精神的に楽です

  1. 一定のペースで走れる
  2. 人に付いて走ると楽に感じる
  3. 集団の連帯感を生まれる
  4. 後半きつくなっても頑張れる

一定のペースで走れる

レースになるとテンションが上がって、前半を実力以上のペースで走ってしまい後半に失速するパターンを繰り返すランナーがいます。ペースメーカーを利用すると前半のオーバーペースを防ぎ、後半に力を蓄えることができます

人に付いて走ると楽に感じる

ランニングは人に付いて走ると実力以上の力を発揮できることがあります。風が強い日には集団の後にいれば向かい風が弱まる気がします。楽に走れるという気持ちが大事です。

集団の連帯感が生まれる

ペースメーカーの後ろには集団ができます。集団で走ると連帯感やライバル意識が芽生え、一人で走るよりも力を発揮できることがあります

後半きつくなっても頑張れる

フルマラソンでタイムを狙って走るときつくなる局面が訪れます。ペースメーカーがいれば付いていく気持ちになれるので粘ることができます粘って走っていればきつさが収まって最後までペースを落とさずに走れるかも知れません

ペースメーカー利用の注意点

ペースメーカーを利用するには注意点もあります。事前に知っておけばペースメーカーを上手く利用するヒントになります

  1. ペースメーカーはグロスタイムで走る
  2. 集団になるので給水所、エイドステーションで混む
  3. 一定のペースで走り続けるので給水やトイレで置いていかれることがある
  4. 一定のペースが走り難く感じることもある
  5. ペースキープが下手なペースメーカーもいる
  6. 自分の目標ペースに合ったペースメーカーがない場合もある

ペースメーカーはグロスタイムで走る

市民ランナーは自己ベストタイムを示すとき、大体のランナーはネットタイムを言います。ペースメーカーは設定タイムをグロスタイムでゴールすることを目指します。グロスタイムとネットタイムの違いを知らないでペースメーカーに付いていくと自分の想定ペースよりも速いペースで走ることになります。

集団になるので給水所、エイドステーションで混む

ペースメーカーの後ろには大集団ができます。集団で走ることで連帯感や安心感が生まれますが、足が接触して転倒するリスクもあります。特に注意が必要なのは給水所やエイドステーションです

大集団がドリンクや食べ物を一斉に取りにいくと接触の危険は高くなります

一定のペースで走り続けるので給水やトイレで置いていかれることがある

ペースメーカーは給水中も一定のペースで走ります。歩かないと給水が出来ないランナーは給水でペースメーカーから置いて行かれます。給水後にペースメーカーに追いつくにはペースを上げて走ることになり、急激にペースを上げると体力を消耗します

トイレで時間を取られた場合、ペースメーカーに追いつくのが難しい場合もあります。

一定のペースが走り難く感じることもある

大抵のランナーは走り始めの1~2kmはペースが上がらず、2~4kmでペースが上がり、5km位でペースが一定に落ち着きます。ペースが落ち着くまでもう少し距離がかかるランナーもいます。最初からペースメーカーに付いていこうとするとペースが速過ぎて、きつく感じることがあります

ペースキープが下手なペースメーカーもいる

走力があるランナーでも42.195kmをずっと一定のペースで走るのはとても難しいです。ペースメーカーの中には前半に飛ばし過ぎ、途中で少しペースを抑え、中盤に再びペースが上がってしまい、後半で調整ようなペースがアップダウンする人もいます。

自分の目標ペースに合ったペースメーカーがない場合もある

ペースメーカーは30分毎に用意されている大会が多いです。3時間30分、4時間、4時間30分、5時間といった具合です。3時間45分が目標タイムのランナーには合ったペースメーカーが居ない場合があります。

上手なペースメーカーの利用方法

自分のレースプランに合わせてペースメーカーを上手く利用しましょう。ペースメーカーの後ろにピタリと付いて行くだけがペースメーカーの利用方法ではありません。

  1. 自分のレーススタイルを知る
  2. 前半速いペースで突っ込み過ぎで自滅しがちなランナー
  3. 前半速めのペースで入って、後半粘るランナー
  4. 前半抑えて中盤で少し上げ、終盤に粘る
  5. 前半から中盤まで一定のペースをキープして、終盤まで粘る

自分のレーススタイルを知る

フルマラソンのレーススタイルは幾つもあります。自分のレーススタイルを改めて考えてみましょう。例えば

  • 前半速めのペースで入って、後半に粘る
  • 前半抑えて中盤で少し上げ、終盤に粘る
  • 前半から中盤まで一定のペースをキープして、終盤まで粘る

などです。

前半速いペースで突っ込み過ぎで自滅しがちなランナー

前半速いペースで行き過ぎないようにスタート直後にペースメーカーの後ろに付き、10~15km位までペースメーカーの後ろで我慢します。10~15kmを過ぎて自分のペースが落ち着いたら、どうするかを考えます。

ペースメーカーのペースが自分に合っていて丁度良い場合は、そのままペースメーカーに付いていきましょう。もう少し上げた方がリズムに乗れる場合はペースメーカーを追い越して少しだけペースを上げましょう。

前半速めのペースで入って、後半粘るランナー

男性ランナーに多いタイプです。前半速めのペースの方が調子が出ます。このタイプはスタート直後はペースメーカーを追い越して自分のペースで走った方が良いです。歩かないと給水ができないランナーは、給水所でペースメーカーに抜かれ、しばらく走ると抜き返す展開になるかも知れません。

無理にペースメーカーにぴったりと付く必要はなく、抜きつ抜かれつを繰り返すのもペースメーカーの利用方法の一つです。終盤になってペースメーカーに置いていかれないように粘りましょう。

前半抑えて中盤で少し上げ、終盤に粘る

長い距離のトレーニングが十分に積めているランナーは前半抑えめにして、中盤でペースを少し上げている走りができます。このレース展開ができると安定してタイムが出せます。気候条件が良くペースメーカーを上手く利用出来れば良いタイムがでます。

スタート直後はペースメーカーを先に行かせます。離れて行っても気にしません。中盤から後半にかかったところで自然にペースメーカーに追いつきますこの時点できつければ粘ってペースメーカーに付いていきます

余裕があればペースメーカーを抜いても良いです。しばらくペースメーカーに付いて走り終盤で最後の力を振り絞ってペースメーカーを抜いてゆく戦略も良いです。

前半から中盤まで一定のペースをキープして、終盤まで粘る

中盤まで一定のペースで走れるのは走力が高い証拠です。給水・給食を走りながらでき、基本的にトイレに行かないランナーはペースメーカーにピッタリと付いて走る方法も有効です。

スタート前にペースメーカーの位置を確認して、スタート直後の混雑が収まりペースが安定したらペースメーカーの後ろに付きます集団が大きい場合は自分が走りやすい位置を確保すると良いです

給水の混雑を避けるために、あえて集団から数十m後ろをキープして走るのもおすすめです。

まとめ

ペースメーカーを上手く利用することで、走力をよりも速いタイムで走れることがあります。ランニングは人に付いて走ると走りやすいです。集団で走ることでモチベーションも維持しやすいです。

ペースメーカーを利用方法を間違うと悪い結果になることもあります。自分のタイプに合ったペースメーカーの利用方法を考えて走りましょう。

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しゅうぞう

しゅうぞう

現役のランニングインストラクターです。パーソナルで教えたランナーは400人以上、レッスン時間は約2000時間になります。週2回のグループレッスンも担当。ランニング学会会員です。ランナー、ランニングインストラクターとしての経験を記事に発信します。自己ベストタイムはフルマラソン2時間57分30秒(2016年)、ハーフマラソン1時間22分3秒(2018年)。