ランニングに起こしやすい膝の慢性障害。外側、中央、内側、痛み別に解説。

ランニング知識

ランニング中の膝の痛み。ランナーなら一度は経験があるのではないでしょうか。経験すると、ランニングしていてもまた痛みが出るのではないか、と不安になりますよね。

そこで、ランナーが起こしやすい膝の慢性障害を知ってみませんか?知識をつけることで、病院受診のタイミングを逃さないようにしましょう。 タイミングを知ることで、安心してランニングができるようになるはずですよ。

ランニングによる膝の慢性障害、痛みが出た時の対処法、膝周りの筋肉トレーニングをまとめました。

ランニングよる膝の慢性障害

ランニングによって次の4つの障害を起こすことが多くなります。

  1. 大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝)
  2. 膝蓋腱炎(ジャンパー膝)
  3. 鵞足炎
  4. 腸脛靭帯炎

1.大腿四頭筋腱付着部炎(ジャンパー膝)

【痛みの場所】 大腿四頭筋腱付着部炎は、膝の上側や下側に痛み、熱感、腫張といった症状を伴います。

ジャンプやダッシュなどを多くするスポーツにみられる障害で、オーバーユースが原因となって現れますよ。

大腿四頭筋の柔軟性の低下が起因しているといわれていますが、成長期の長身選手が患う可能性が多い傾向にあります。骨の成長と筋肉の成長のバランスが悪くなり、膝の周囲に負担がかかる結果です。

【治療】 安静、運動後のアイシング、ストレッチ。こういったものが治療になるため、予後は比較的良好ですが、時間がかかります

2.膝蓋腱炎(ジャンパー膝)

【痛みの場所】 膝の下辺りに痛みが出るのが特徴です。こちらも、ジャンプ、ダッシュなどを行うスポーツ選手に多く、原因もオーバーユースが主になります。

膝とすね(脛骨)を繋ぐ膝蓋腱に、炎症や損傷が起こることが原因で症状が出ますよ。

【治療】 治療としては、ジャンプ、ダッシュ等の運動制限、大腿四頭筋、ハムストリングスのストレッチ。場合によって、鎮痛剤や塗り薬の処方といった内容になります。

症状が強い場合には、ヒアルロン酸、ステロイドなどの注射という選択をすることもありますよ。

3.鵞足炎

【痛みの場所】 膝下の内側に痛みが出て、階段の昇り降りに苦労するのが特徴です。

走ることが長いスポーツや水泳などの選手に多くなります。

膝を曲げる時に使う筋肉が付着する部位を鵞足といいます。膝を曲げる時に、これらの場所とすね(脛骨)の上側の部位が擦れて炎症を起こした状態になると、発症しますよ。

よって練習量が多くなると痛みを訴えることが多くなります。

【治療】 治療としては、安静、ストレッチ、アイシング。さらに、鎮痛剤や湿布などを併用します。

4.腸脛靭帯炎

【痛みの場所】 腸脛靭帯炎は、膝の外側に痛みが生じます。進行すると膝の屈伸でも痛むようになり、階段の昇り降りでも痛むようになります。

腸脛靭帯は、骨盤の上の部分からすね(脛骨)まで伸びる靭帯です。ランニングやジャンプなどの屈伸運動で炎症が生じ、痛みを感じるようになった状態が腸脛靭帯炎ということになります。

【治療】 治療は主に「安静」とし、アイシングや湿布薬で様子を見ます。ステロイド注射は効果が高いですが、ドーピングに反応するので大会前はおすすめできません。

痛みが出たときの正しいアイシングとは

痛みがでたときに、自分でケアできる身近な方法として「アイシング」があります。ポイントに分けて解説していきますね。

  1. アイシングとは氷嚢を使い冷やすこと
  2. ケガをしたときにはできるだけ早くアイシングする
  3. アイシングの方法

1.アイシングとは氷嚢を使い冷やすこと

捻挫や打撲などのケガをしたときや、ランニング後のメンテナンスとして氷嚢を使い冷やす行為をアイシングといいます。

アイシングを行うことで痛みや腫れを抑えることができますよ。

捻挫や打撲の後には出血、腫れといった症状が現れます。アイシングを行うことによって損傷部位の血管を収縮させることができるので、周囲の正常組織の破壊を最低限に抑えることができるというわけです。

2.ケガをしたときにはできるだけ早くアイシングする

ケガをしたとき、ランニング後に患部が熱を持っている状態のときには、できるだけ早くアイシングをする方が効果が高まります。正常組織の破壊を、最低限に抑えられるからです。

3.アイシングの方法

①氷嚢を準備します。

ビニールの袋に氷と少量の水を入れたものでも大丈夫です。

②直接患部に当てます

はじめは痛みを感じることがありますが、5分後には感覚が麻痺します。

③1回のアイシングの時間は15~20分です。

再度行う際には40分以上間隔をあけるようにします。

④ケガをしてから48時間はアイシングを繰り返します。

1日6~8回程度が最適といわれています。

⑤就寝時や外出時にはアイシングシートを利用しましょう。

アイシングシートの効果は4~6時間です。繰り返し貼り替えましょう。

ランニングを中断し適切なアイシングを繰り返しても、症状がおさまらない場合。2週間ランニングを中断しても治らない場合。これらの場合には膝の関節を受傷している可能性があります。整形外科を受診するようにしましょう。

膝周りの筋肉トレーニング方法

膝の慢性障害を防ぐためには、ストレッチや下半身の筋トレなどが効果的です。とくにランニング中の膝の負担を軽減するためには、以下の2つが効果的ですよ。

  1. スクワット
  2. 踏み台昇降

1.スクワット

膝痛の予防・緩和にスクワットの正しい筋トレ法 ※ひざ痛専門トレーナー監修

スクワットは週二回を目安に取り入れましょう。注意事項は以下の3つです。

肩幅に足を開くこと。

つま先から膝が出ないようにすること。

膝が内側に入らないこと。

2.踏み台昇降

踏み台昇降でヒザが痛くならずお尻や腹筋に効かせるコツ

踏み台昇降は、腸脛靭帯も鍛えられるので膝の障害予防には効果的ですよ。以下の3つに注意しましょう。

①腰を曲げず股関節を意識すること。

背筋を伸ばして

ドスンと下りない。(体重を残して下りる。)

最後に

①膝の慢性障害は、痛みの場所や程度によって診断名は異なりますが、対処法として安静、アイシング、ストレッチは同じです。場合によって注射などが効果が高いことがありますよ。

②適切にアイシングをしても症状が治まらない場合、続く場合には整形外科を受診しましょう。

③ランニング中の膝の負担を軽減するためには、スクワット、踏み台昇降が効果的です。

膝の慢性障害は、発症しても重症でなければランニングを続けられます。適切に向き合い、いかに悪化させないか、という事が重要になります。一つ苦難を乗り越えたなら、またランナーとして新たなスタートが切れるはずですよ。