フルマラソンには30㎞の壁があると言われています。30㎞まで順調にペースを維持して走ってきても30㎞を過ぎると急に脚が重くなりペースダウンしてしまう現象です。30kmの壁にぶつかると、初心者ランナーはペースダウンで関門に引っかかってしまいます。
自己ベストタイムの更新を目標に走っているランナーは失速でタイム更新が出来なくなってしまいます。「30㎞の壁さえ無ければ」と思うランナーは多いのではないでしょうか。この記事は30㎞の壁による失速を抑えるコツについて書かれています。
30㎞の壁とは何か?
30㎞の壁について少し詳しくみていきましょう。理論的に説明できるものもありますが、30㎞の壁は多くのランナーの経験により作り出されたものです。
自己ベストを狙うランナーに30㎞の壁を無くす方法は無い
ウエブなどに「30㎞の壁を無くすトレーニング方法はこれだ!」など書かれています。実際には、自己ベストを狙ってフルマラソンを走るランナーに30㎞の壁を無くす方法はありません。対策としては
- 30㎞の壁を出来るだけ後半にずらす
- 30㎞の壁での失速を出来るだけ少なくする
です。
30㎞の壁を感じない方法はペースダウンして走ること
100㎞のウルトラマラソンを走る時に30㎞の壁はありません。100㎞完走が目標なのでペースは抑えて走ります。30㎞で壁にぶつかっていては100㎞の完走は厳しいです。その代わり100㎞のウルトラマラソンでは70kmの壁があります。
ベストタイムを目指して走ると全体の3/4程度の距離に壁が存在します。ハーフマラソンの場合は15km位からがきついポイントです。
3つの30㎞の壁の原因
30kmの壁の原因はいろいろと言われますが、主には3つです。
エネルギー切れ
人間の身体はエネルギーで動きます。体内に蓄積されたものの中で、炭水化物、脂肪、筋肉をエネルギーとします。脂肪はフルマラソンを数回走る分のエネルギーが貯蔵されています。エネルギー切れを行うのは炭水化物です。
炭水化物は脳を働かせる重要なエネルギーなので、完全に枯渇する前に脳が身体に対して炭水化物の消費を抑えるように指令を出します。マラソン中の場合は身体が重くなり走るペースが落ちてしまうのです。
肉体の疲労
フルマラソンにおける肉体の疲労が30㎞で起こる原因について明確な理論、データはありません。ヒントになるのは100kmウルトラマラソンで30㎞の壁は無い点です。100kmを完走するつもりのペースで走ると30㎞は軽々クリア出来てしまうのです。ハーフを自己ベストペースで走ると30㎞まで到達することが出来ないかも知れません。
30㎞で肉体的な疲労により壁を感じるのは走るペースを大きな関係があると考えられます。フルマラソンで自己ベストを出すペースで走ると30㎞で肉体的な疲労がやってくるのです。
メンタル
メンタルは肉体的な疲労やエネルギー切れと大きな関係があります。人間の脳は身体の限界まで動かさないようにリミッターが働くと言われています。トップアスリートの中にはリミッター外すメンタルコントロールの方法を知っている人もいるようです。
一般ランナーは、肉体の疲労やエネルギー切れを感じると「もう駄目だ」とペースを落としてしまいます。気持ちが切れるという状態です。
「エネルギー切れ」への対策
「エネルギー切れ」への対策は理論上は簡単です。フルマラソンで使うエネルギー量に対して不足しないようにエネルギーを溜めておき、不足しそうな分は途中で補給すれば良いのです。車のガソリン補給と同じです。
実際には適切なエネルギー量には個人差があり、どれ位のエネルギーを補給すれば良いかを把握することは難しいです。
自分では気づかずエネルギー切れになっているランナーも多い
初心者ランナーに多いのですが、後半脚が動かなくなってしまった場合、エネルギー切れによる失速があります。本人はエネルギー切れに気が付かずトレーニング不足だと思っているのです。エネルギー補給を適切にしてあっさり自己ベストを更新したケースもあります。
エネルギー切れ予防は、食べ溜めとレース中の補給
エネルギー切れの予防の基本は必要なエネルギーを食べ溜めしたり、途中で補給することです。
フルマラソンで必要なエネルギーを確認しましょう。体重60kgのランナーがフルマラソンを完走するために必要なエネルギーは
60kg × 42.195km = 2531.7kcal
と簡易的に計算できます。
脂肪は1gで7~9kcalのエネルギーがあるので、361.7~281.3gの脂肪で賄えることになります。但し運動は脂肪のエネルギーだけではできません。エネルギー源として炭水化物が必要です。
軽いジョギングで
脂肪:炭水化物=50:50
の割合で使われます。運動強度が高くなると炭水化物が使われる割合が多くなります。マラソンの場合、ペースにもよりますが
脂肪:炭水化物=30:70
の割合にはなりそうです。
この場合は炭水化物で作り出さなければならないエネルギーは1772.2kcalです。炭水化物が持つエネルギー量は4kcalなので、443gの炭水化物が必要になります。ところが体内に貯蔵できる炭水化物の量は肝臓、筋肉合せて400g程度です。
更に基礎代謝で必要なエネルギーを差し引くと蓄積した炭水化物では足りなくなります。途中で炭水化物を補給する必要があります。
最適なエネルギー切れ対策は個人差があるので試行錯誤
足りなくなる分を補う方法がフルマラソン前の行う、カーボローディングという食べ溜めと、フルマラソンの途中のエネルギー補給です。カーボ―ローディングをし過ぎると体重が極端に増える弊害があります。
トレーニングを積むとランニング中のエネルギーとして脂肪を使う割合を増やすこともできます。効率の良いランニングフォームで走ると体重1kgあたり1kcalよりも少ないエネルギーで走れるようにもなります。
丁度良いエネルギー貯蔵量、補給量には個人差が大きく、試行錯誤で自分に合ったものを見つけることが必要です。
「肉体の疲労」への対策
肉体の疲労が30㎞でくるのは、自己ベストを狙って走る限り避けることができません。疲労が来たときに失速をしないトレーニングを積むことが「肉体の疲労」への対策です。
結局は長い距離に慣れるしかない
フルマラソンは42.195kmを走る競技です。この距離を走って自己ベスト記録を出すには距離に対応できる身体を作っていくしかありません。初心者は長い時間身体を動かすことがおすすめです。3~4時間のロングウォーキングはフルマラソンの初期トレーニングとして良いです。
走る距離を長くしてゆくのは良いのですが、距離を伸ばしてゆくと疲労が溜まり過ぎてトレーニングを重ねることが出来なくなったり、故障の原因にもなります。自分の身体を相談しながらトレーニングメニューを考えるものフルマラソントレーニングの難しく楽しいところです。
レースペースに慣れるトレーニングも大事
フルマラソンの自己ベストを出すためのペースは明らかです。ベストタイムが3時間28分00秒のランナーが自己ベストを出すには1㎞あたり4分55秒のペースで走り続ける必要があります。レースペースを楽に走れるようにするトレーニングも大事になってきます。
楽に走れないペースで走ると、30㎞に到達する前に肉体的な疲労が来て失速してしまいます。
35kmを一度はクリアしておく
フルマラソンのトレーニングとして30㎞走がメジャーになってきました。30㎞をレースペースで走るケースが多いようです。確かに30㎞をレースペースで走っておくと本番では30㎞を越える辺りまで脚がもつ可能性があります。30㎞を1回だけで終わらせるは少々不安です。
30㎞を2回は行いたいところです。1回目はペースは抑えて走り切ることを目標にします。2回目はレースペースから20~30秒遅い位である程度の余裕で走れると良いです。出来れば30㎞走を1回、35km走を1回走れると良いです。35kmを経験すると自信になります。
「メンタル」への対策
一般ランナーでメンタルが強くて限界を遥かに超えるパフォーマンスを出せる人は稀です。フルマラソンのメンタルで大事なのは心が折れる状況まで持っていかないことです。
「セカンドウインド」を体験する
「セカンドウインド」というのは、走っていて楽に感じるポイントのことです。逆に苦しく感じるポイントは「デットポイント」と言います。長い距離を走っていると「セカンドウインド」と「デットポイント」が交互にやってきます。長い距離を走るトレーニングの中で、「セカンドウインド」が来る経験をすることが大切です。
「セカンドウインド」を経験していると、30㎞付近できつくなっても「我慢してペースをキープすればセカンドウインドが来る」と経験的に知っているので頑張ることができます。
残りキロ数のカウントダウンに持ち込む
フルマラソンで33kmまで壁を感じないで走れると、残りは9kmなのでカウントダウンです。ここまで来ると気持を切れないで走りきることがし易いです。逆に25kmで壁がやって来ると残りは17kmです。先の長さに気持ちが切れ易いです。
トレーニングで35kmを経験することで、33kmまで壁を遅らせる可能性が高くなります。
トレーニングを信じる
トレーニングで壁が来るのを遅らせることは出来ますが、壁はやって来ます。壁がやって来たときに気持を切らさないのは、自分が積んできたトレーニングを信じる気持です。やはり最後の最後は自分を信じる気持ちになります。
まとめ
フルマラソンで自己ベストを狙うペースで走ると30kmの壁はやってきます。大事なのは30kmの壁がやって来ても失速しないことです。失速しないためにはエネルギーを適切補給する、事前のトレーニングで30kmの壁を遅らせるようにする。
最後は積んできたトレーニングを信じることが大切です。
しゅうぞう
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