フルマラソンのタイムアップに有効な筋トレトレーニング

ランニング知識

フルマラソンで自己ベストタイムの更新を狙うランナーは、トレーニング方法に興味があるのではないでしょうか?WEB、雑誌、本では様々なトレーニング方法が紹介されています。その中で効果の是非を問われるのが「筋力トレーニング」、通称「筋トレ」です。

「筋トレを取り入れれば確実にタイムアップする」という情報がある一方「筋トレは不要、走るための筋肉は走れば付く」と言うコーチもいます。何が正しいか混乱するランナーも多いでしょう。この記事は、フルマラソンでタイムアップを目標にするランナーに有効な筋トレについてまとめました。

マラソンに筋トレは必要?

結論から言えば、フルマラソンのタイムアップに筋トレは有効です。但し、むやみに筋肉を付ければパフォーマンスが上がる訳ではありませんランニングに必要な筋肉を使えるようにすることが大切です。

  1. 筋トレは有効だが余分な筋肉は不要
  2. 筋肉を付けるよりも筋肉を上手く使えるようにする

筋トレは有効だが余分な筋肉は不要

ランニングは身体を動かして自重を前に進めてゆく運動です。体重は軽い方がパフォーマンスが良いです。不要な筋肉を付け過ぎると弊害があります。

  • 身体が重くなりランニングパフォーマンスが落ちる
  • 筋肉が身体の動きの妨げになることがある

筋肉を付けるよりも筋肉を上手く使えるようにする

筋トレと聞くと
・重いものを持ち上げる
・キツイ運動を地味に繰り返す
・キツさの限界まで行う
というイメージがあるかもしれません。

フルマラソンで大切なのは、筋肉を付けるより、筋肉を上手く使えることです。

筋トレの種類を知ろう

筋トレには目的がありトレーニングの種類が違ってきます。フルマラソンのタイムアップに必要な筋トレを理解するため不向きな筋トレをしないために、筋トレの種類を理解することは大切です。

  1. 見せる筋肉を作る筋トレ
  2. 瞬間的に大きな力を発揮する筋トレ
  3. 姿勢を安定させる筋トレ

見せる筋肉を作る筋トレ

ボディービルダーは見た目がカッコ良い筋肉を付けるのがトレーニングの目的です。バーベルやダンベルのような重りを使って筋肉に負荷をかけていきます。狙いは筋肉に負荷をかけて筋繊維を太くすることです。

トップランナーに筋肉モリモリの人はいません。ランニングに見せるための筋肉は必要なく、不要な筋肉はランナーには重りとなりランニングパフォーマンスを下げます

瞬間的に大きな力を発揮する筋トレ

瞬発力が必要な競技は多いです。ウェイトリフティング、投てき競技は代表的な瞬発力を要する競技です。ほとんどの球技もフェイントかけたり、スマッシュを打つときに瞬発的な力が必要です。

ランニングは着地で脚に体重の3~4倍の力がかかると言われ、大きな力を必要とします。大きな力は必要ですが着地で使う筋肉の使われ方は、フェイントをかけたりモノを遠くに投げるときと違う使われ方をします

ランニングで使われない筋トレをしても、ランニングのパフォーマンスアップの有効は薄いです。

姿勢を安定させる筋トレ

多くの競技では姿勢を安定させる筋力は大切です。安定した姿勢は大きな力を発揮しやすく、無駄な力を使わないでプレーが出来ます。身体を安定させるには体幹トレーニングが有名です。

ランニングでも体幹トレーニングは重要です。

ランニングに必要な筋肉

ランニングは全身運動なので身体全体の筋肉を使います。その中も大切なのは姿勢を支える筋肉です。着地動作を支える筋肉も大切です。

  1. ランニング運動の特徴
  2. 姿勢を支える筋肉はランニングの基礎
  3. 着地を支える筋肉も大切

ランニング運動の特徴

ランニングの特徴は

  • 同じ動作を繰り返す
  • 着地で最大の力を使う
  • 長い時間動き続ける

です。

フルマラソンは3時間以上、同じ動作を続ける特殊な運動です。同じ動作を繰り返すには姿勢を安定してキープする筋力が大切です。着地で身体を支える筋力も必要です。着地動作が安定してできないとランナーの故障を招く原因になります。

姿勢を支える筋肉はランニングの基礎

ランニングで重要な姿勢を支える筋肉は、お腹周り、背骨周り、骨盤周りです。これらの筋肉を身体が安定するように鍛えることが大切です。更に身体の奥の筋肉(インナーマッスル)を使って姿勢を安定できると良いです。

着地を支える筋肉も大切

着地動作は足関節、膝関節、股関節を巧みに連動させ、着地の衝撃を受けながら推進力に変えていきます。

着地で使う関節と筋肉の関係は
・足関節→ふくらはぎ
・膝関節→ももの前
・股関節→お尻
です。
この中でメインで使いたいのはお尻です。

実践!ランニングに有効な筋トレ

フルマラソンのトレーニングに有効な筋トレを紹介します。ポイントを抑えて効果的にトレーニングをしましょう。

  1. トレーニングのポイント
  2. ランニング姿勢を支える筋トレ
  3. 着地を安定させる筋トレ
  4. 筋トレの頻度と注意点

トレーニングのポイント

筋トレで大切なのは、何のための筋トレなのか理解して行い、鍛えたい部分を意識して、正しい姿勢で行うことです。

目的を持つ

トレーニングは何を鍛えたいのか明確な目的を持つことが大切です。筋トレも同じです。形だけを真似しても効果が薄いことが多く、目的とは違った筋肉が鍛えられてしまうこともあります。

鍛えたい部分を意識する

筋トレでは鍛えたい部分を意識することが大切です。インナーマッスルなどはなかなか意識をし難いのですが、身体の奥の方の筋肉を意識し続けていると、段々インナーマッスルを使う感覚が掴めてきます。

正しい姿勢をキープする

正しい姿勢で、正しい筋肉の使い方が出来るようになることが大切です。回数や時間は目安と考えてください。個人個人に合った回数、時間があります。無理な姿勢で筋トレを続けていても目的とは違う筋肉を使うことになり、ランニングの筋トレとして効果が薄くなります。

最初は短めの時間で正しい姿勢、鍛えたい筋肉を意識し慣れてきたら楽に支えられるポジションを探し、更に慣れてきたら時間を伸ばすと良いです。

ランニング姿勢を支える筋トレ

目的:お腹周りの体幹を鍛えてランニング姿勢を安定させる

ドローイン

意識する筋肉:お腹周り、お腹のインナーに効くと更に良い

  1. 安定して立ちます
  2. 軽く息を吸ってお腹を膨らませます(予備動作)
  3. 息を吐きながらお腹を凹ませます(お腹周りに力が入ります)
  4. 10秒程度、力を入れたままキープします
  5. お腹の力を抜きます
  6. 上記2~5を3セット行います

プランク

意識する筋肉:お腹周り、背中、お尻

  1. うつ伏せになり、肘を地面につきます
  2. お腹を凹ます意識で、お腹、お尻、背中に力を入れます
  3. 体幹に力を入れることで身体が地面から持ち上がります
  4. 身体が持ち上がった状態で10秒キープします
  5. 力を抜きながら身体を地面に下ろします
  6. 上記1~5を3セット繰り返します

サイドプランク

意識する筋肉:お腹周り、特にお腹の横

  1. 横向きに寝そべります
  2. お腹を凹ます意識で、お腹、お尻、背中に力を入れます
  3. 体幹に力を入れることで身体が地面から持ち上がります
  4. 身体が持ち上がった状態で10秒キープします(身体下側のお腹の横も力が入ります)
  5. 力を抜きながら身体を地面に下ろします
  6. 上記1~5を3セット繰り返します

ヒップアップ

意識する筋肉:お尻を中心に、お腹周り、背中

  1. 仰向けに寝て膝を立てます
  2. お尻を絞るように力を入れ、身体を地面から持ち上げます
  3. お腹周り、背中に力を入れて姿勢を安定させます
  4. 身体が持ち上がった状態で15秒キープします
  5. 力を抜きながら身体を地面に下ろします
  6. 上記1~5を3セット繰り返します

エルボーtoニー

意識する筋肉:体幹全体の筋肉(身体がブレないようにバランスをとる)

  1. 四つん這いになります
  2. 右手と左脚を同時に持ち上げます
  3. お腹周り、背中、お尻に力を入れて姿勢を安定させます
  4. 10秒キープします
  5. 右手、左脚を地面に下ろします
  6. 左手と右脚を同時に持ち上げます
  7. お腹周り、背中、お尻に力を入れて姿勢を安定させます
  8. 10秒キープします
  9. 左手、右脚を地面に下ろします
  10. 上記1~9を3セット繰り返します

着地を安定させる筋トレ

着地をイメージして、お尻で着地衝撃を受け止め、お腹で安定させる意識で行います。動作だけ真似ると負荷の低く感じかも知れませんが、身体を安定させる意識に集中すると、お尻とお腹がしっかり使えます。

目的:着地でメインに使うお尻の筋肉を使い、お腹で姿勢を安定させる意識を作る

バックランジ

意識する筋肉:軸足(前足)側のお尻、お腹で姿勢を安定させる

  1. 安定して立ちます
  2. 左足を半歩後に引きます(右側のお尻、お腹で姿勢を安定させる、重心は右足に80~90%)
  3. 左足を戻します
  4. 上記1~3を10回繰り返します
  5. 右足を半歩後に引きます(左側のお尻、お腹で姿勢を安定させる、重心は左足に80~90%)
  6. 右足を戻します
  7. 上記1~3を10回繰り返します
  8. 左右交互に2セット行います

片足スクワット

意識する筋肉:軸足(前足)側のお尻、お腹で姿勢を安定させる

  1. 安定して立ちます
  2. 左足を半歩後に引きます(右側のお尻、お腹で姿勢を安定させる、重心は右足に60~70%)
  3. 右股関節を曲げて身体を軽く下げます(膝が前に出るとももの前の筋トレになってしまいます)
  4. 上記1~3を10回繰り返します
  5. 右足を半歩後に引きます(左側のお尻、お腹で姿勢を安定させる、重心は右足に60~70%)
  6. 左股関節を曲げて身体を軽く下げます(膝が前に出るとももの前の筋トレになってしまいます)
  7. 上記1~3を10回繰り返します
  8. 左右交互に2セット行います

筋トレの頻度と注意点

最後にトレーニングの頻度と注意点です。

筋トレの頻度

今回紹介した筋トレは筋肉を上手く使えるようにすることが目的です。筋肉への負荷は低いので毎日行っても大丈夫です。ランニングの前に行うと使いたい筋肉に刺激が入り、走りが安定します。週1回でも少しづつ筋肉の使い方が上達します。

効果を得るには最低でも週1回は継続してください。

注意点

体幹トレーニングを行うとランニング姿勢をキープするために、体幹に力を入れ過ぎるランナーがいます。体幹トレーニングでは力を入れますが、走る時に力が入り過ぎると動きが悪くなります。

姿勢は力のバランスなので大きな力は必要ありません。姿勢キープに必要な筋肉を必要最小限使うのが理想です。体幹の意識が無いと駄目ですが入れ過ぎも良くないのです。

まとめ

フルマラソンのタイムアップに有効な筋トレの方法を、何故必要なのか、どのようなエクササイズが有効なのかを解説しました。大切なのは体幹を使って良い姿勢をキープすること、着地を脚だけでなく体幹を使うことです。

筋トレでフルマラソンに不要な筋肉を増やしてしまい、体重が重くなるのはタイムアップにマイナスです。ランニングには瞬発力を要する動きや、筋肉は必要ありません。

必要な筋肉を使えるようにする筋トレがフルマラソンでタイムアップに有効です。

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しゅうぞう

しゅうぞう

現役のランニングインストラクターです。パーソナルで教えたランナーは400人以上、レッスン時間は約2000時間になります。週2回のグループレッスンも担当。ランニング学会会員です。ランナー、ランニングインストラクターとしての経験を記事に発信します。自己ベストタイムはフルマラソン2時間57分30秒(2016年)、ハーフマラソン1時間22分3秒(2018年)。