レベルアップしたいランナーにはLTペース走がおすすめ

ランニング知識

フルマラソンやハーフマラソンのタイムを上げたいと思ってトレーニングを積んでいるランナーは多いのではないでしょうか。ランニングは頑張った分タイムアップという成果が出るのが楽しみの一つです。

ランニングの継続年数が長くなると、タイムアップをするにはトレーニング方法に工夫が必要です。トレーニングに目的を持って行うと効果が高いです。LTペース走はレースペースのアップに効果があります。レースペースが上がればフルマラソン、ハーフマラソンのタイムもアップします。

LTペース走は中・上級ランナーにおすすめのトレーニング方法です。

LTペース走とは何?

LTペース走とは、スピード系のトレーニング方法の一種です。ちょっときついと感じるペースで20分間走り続けます。自己ベスト記録を更新したい中・上級者向けのトレーニングです。

そもそもLTとは?

LTとはLactateThresholdの略で、日本語にすると乳酸性作業閾値(にゅうさんせいさぎょうしきいち)と言います。LTとは運動強度を上げていったときに、血中乳酸濃度が急に高くなる点を言います。

ランニングを例にLTを見てみる

運動をしていない平常時の血中乳酸濃度が2mmol/Lのランナーの場合を例にします。ランニングペースを上げながら血中乳酸濃度を測定します。

  • 5:50/km 2mmol/L
  • 5:30/km 2mmol/L
  • 5:10/km 3mmol/L
  • 4:50/km 4mmol/L
  • 4:20/km 5mmol/L
  • 4:00/km 6mmol/L

左側がランニングペース、右側が血中乳酸濃度です。このランナーの場合はLTは5:10/kmになります。

LTとランニングの関係

LTを超えるとランニングペースと血中乳酸濃度に関連性が出てきます。ペースが上がる程、血中乳酸濃度も上がります。LTまではペースを上げても血中乳酸濃度はほとんど変わりません。LTを境にランニングペースが身体に対する負荷が変わっていくのです。

体感的にはLTを超えると呼吸が乱れてきます。気持ち的にも段々ときつくなってきます。

LTをランニングトレーニングに活かす

人間の身体は少しづつ運動負荷を大きくしていけば対応するようにできています。急に大きな負荷をかけると負荷に耐え切れず壊れてしまうこともあります。LTは運動負荷がきつくなる境目なので、LTよりも少し速いペースで走るトレーニングは、運動負荷として最適です。

LTペース走はLTよりも少し速いペースで走るトレーニングです。

LTペース走のメリット

LTペース走を行うとレースペースが上がります。自己ベスト記録更新の為に良いトレーニング方法です。

レースペースが上がる

LTペース走を繰り替えすとLTが上がってきます。運動負荷に身体が対応してゆくのです。楽に走れるペースが上がっていくのでレースペースが上がることになります。

短時間でできる

LTペース走はきつめのトレーニングです。20~30分程度で終了します。ウォーミングアップとクーリングダウンの時間を入れても1時間でできます。

効果を実感しやすい

LTペース走を定期的に行うと以前よりも楽に走れることがあります。LTが上がった証拠です。同じトレーニングを繰り返し行うことで成果を実感できます。

LTペース走のデメリット

効果の高いLTペース走ですがデメリットもあります。一番難しいのは適切なLTペースを把握することです。ペースが遅いと効果が薄く、速いと走りきることができません。

自分のLTペースが分かり難い

LTを測定するには大掛かりな設備が必要です。走りながら血液を採取して血中乳酸濃度を測る必要があります。日本国内で一般ランナーがLTを測定できる施設少ないです。代替の方法を組み合わせて自分のLTペースを推測することになります。

集団で行い難い

LTペースは個人個人で違います。フルマラソンやハーフマラソンのタイムが同じランナーはLTペースが同じと考えて良いのですが、周りに多くはいません。フルマラソンのタイムが10分違えばLTペースは違ってきます。

ランニング練習会のペース走は6:00/km、5:30/km、5:00/km、4:30/kmなどのグループに分かれて行うことが多いです。グループ走は互いにモチベーションを上げながら行えるメリットがありますが、LTペース走はグループで行うことが難しいです。

負荷は高め

LTペース走はややきつく感じる状態で20~30分走るトレーニングなので負荷は高めです。負荷が高いトレーニングを一人で行うことになります。きついトレーニングを一人で行うことに慣れていないランナーには難しいトレーニングになります。

場所を選ぶトレーニング

LTペース走は一定のペースで20~30分走るトレーニングです。途中に信号があったり、歩行者・自転車が多い場所では行い難いです。大きな起伏も無い方が良いです。特に上級者ランナーはLTペースが速いので走りやすい環境で行いたいところです。

自分のLTペースを推測する

幾つかの方法から自分のLTペースを推測してみましょう。ペースの値に違いが出た場合は一番速いペースで頑張ってみましょう。

実際のレースペースから推測

LTペース走に適したペースはハーフマラソンで自己ベストを出した時のペースがあてはまります。ハーフマラソンの自己ベストタイムが1時間45分のランナーは、LTペース走を1kmあたり5分のペースで行うと良いです。

体感的な苦しさから推測

LTペース走は「ちょっときつい」と感じる位のペースで行います。楽に感じるペースでは効果がありません。きつすぎるペースでは長い時間走ることができません。

ジャック・ダニエルズ氏のVDOT表を活用する

ランニングのバイブルと言われる「ランニング・フォーミュラ」の著者が、ジャック・ダニエルズ氏です。彼のトレーニング理論に基づいてLTペース走に適したペースを探すことができます。手っ取り早くペースを探すにはインターネットで公開されているツールを使うのが便利です。

VDOT計算

使い方は簡単です。

  1. ベストタイムを入力する種目を選びます(画面では「ハーフマラソン」を選択)
  2. ベストタイムを入力します(画面では「1時間22分3秒」と入力)
  3. 「Calculate」ボタンをクリック
  4. 「Training」ボタンをクリック
  5. 1kmあたりのペースを確認

実践LTペース走

LTペース走を実際に行ってみましょう。週に1回のスピード系ポイント練習の1つとして取り入れるのが良いです。毎週行う必要はありません。他のスピード練習と組み合わせて月に1~2回行うと良いです。

LTペース走に適した場所を探す

LTペース走は一定のペースで20分間走り続けるペースです。適した場所は

  • 信号が無く止まらないで走れる
  • 歩行者・自転車が少なく自分のペースで走れる
  • アップダウンが少なく一定のペースで走れる

です。スピードを出して走るので車やバイクが来ない場所だと安心して走れます。

ウォーミングアップはしっかり行う

速いペースで走るのでウォーミングアップはしっかり行いましょう。特に寒い時期は急に速いペースで走ると肉離れなどを起こしがちです。注意しましょう。

設定ペースを確認

事前に設定ペースは確認しておきますが、気候、体調を考慮して微調整します。暑い時期は設定ペースを落とします。ウォーミングアップで身体の動きが悪ければ設定ペースを下げます。

最初の5分間は少し遅めでOK

ウォーミングアップが十分であれば、いきなり設定ペースで走っても良いのですが、最初の5分間で緩やかに設定ペースに上げてゆくのがおすすめです。フォームを意識しながら緩やかにペースを上げれば故障のリスクを減らせます。

20分間LTペースを維持

ペースが設定ペースまで上がったら20分間キープして走ります。5分程度走っても呼吸が全く乱れない場合は設定ペースが遅いです。

無理はしない

走り始めて直ぐに呼吸が乱れて走り続けるのがきつい場合は設定ペースが速すぎます。少しペースを抑えましょう。

5分間のクーリングダウンを行う

20分間走るとかなり呼吸が乱れているはずです。ペースを落として5分間ゆっくり呼吸を整えながら走りましょう。

身体のケアを行う

LTペース走は負荷の高いトレーニングです。トレーニング後のケアも大切です。LTペース走が終わったら、軽いストレッチで身体をほぐします。出来ればアイシングをするのが望ましいです。家に帰ったらお風呂で身体を暖めマッサージをします。

風呂上りに念入りにストレッチをすると更に良いです。

記録を確認して次回のトレーニングフィードバック

GPSウォッチやスマホのアプリを見てLTペース走の状態を確認します。

  • ペースは一定に走れたか
  • 心拍数はどれ位の範囲だったか
  • 走っているときに余裕度はどれ位か
  • 脚や身体で痛めたところはないか

などです。データは次のトレーニングのペース設定に活かしていきましょう。蓄積したデータは自分の成長の記録になります。

まとめ

LTペース走は適切なペースで行えば、レースペースが上がり自己ベストタイム更新に役立つトレーニング方法です。手軽に短時間でできるメリットがあります。適切な設定ペースを見つけるのが難しい点、LTペースは個人個人で違うのでグループで走るのが難しい点はデメリットです。

定期的に行い、記録を取っていけば次のトレーニングに活かすことができ、自分の成長を知る手掛かりにもなります。

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しゅうぞう

しゅうぞう

現役のランニングインストラクターです。パーソナルで教えたランナーは400人以上、レッスン時間は約2000時間になります。週2回のグループレッスンも担当。ランニング学会会員です。ランナー、ランニングインストラクターとしての経験を記事に発信します。自己ベストタイムはフルマラソン2時間57分30秒(2016年)、ハーフマラソン1時間22分3秒(2018年)。