フルマラソンのタイムアップには「速く」「長く」走る力が必要です。ランナーは走力をつけるためにインターバルトレーニング、距離走などのトレーニングを積んでいきます。ランナーの中には雑誌やウエブの練習メニューをそのまま行っている方も多いのではないでしょうか。
雑誌やウエブに載っていたトレーニングメニューが合っていて、成果が出ていれば継続するのが良いです。成果が出ない場合はトレーニングを自分に合うようにアレンジするのがおすすめです。
アレンジするにはトレーニングから得られるものを科学的に知り、トレーニングに対する理解を深める必要があります。
速く走るためにはどうすれば良いか?
単純に速く走るなら、行う事は2つです。速く足を動かす。歩幅を大きくする。とてもシンプルな話です。
足を速く動かす
ランニング用語では足を速く動かすことを「ピッチを上げる」と言います。走るリズムを速くすることです。ピッチは1分間の着地回数で表されます。1秒間に3回着地すれば1分間に180回着地することになります。単位はbpsで180bpsと表示されます。
歩幅を大きくする
歩幅が広がれば1回の着地で進む距離が大きくなります。ランニング用語で歩幅を大きくすることは「ストライドを広げる」と言います。単位はcmまたはmです。
ピッチを上げて、ストライドを広げれば速く走れる
ピッチを上げてストライドを広げれば走るペースは上がります。速く走れるようになるということです。シンプルな話です。ピッチを上げるのとストライドを伸ばすのではどちらが難しいかと言えばストライドを伸ばす方です。
トップランナーがフルマラソンを走るときのピッチは190~220bpsです。190~200bpsは市民ランナーの上級者レベルなら出せるピッチです。ストライドは身長によって差がでるので、身長比(ストライド/身長)でランナーの能力を表します。
トップランナーの身長比は90~100%で、市民ランナーは上級レベルでも70~80%です。トップランナーと市民ランナー上級者ランナーとの差はストライドによるものが大きいです。
サブ3達成のためのピッチとストライド
フルマラソンでサブ3を達成するには1kmあたり4分15秒ペースで走る必要があります。1kmを4分15秒ペースで走るピッチとストライドの関係を見てみましょう。身長比80%のストライドで1kmあたり4分15秒ペース走るためのピッチです。
身長(cm) | ストライド(cm) | ピッチ(bps) |
155 | 117 | 202 |
160 | 120 | 196 |
165 | 124 | 189 |
170 | 128 | 184 |
175 | 132 | 179 |
180 | 135 | 174 |
185 | 139 | 169 |
ピッチ、ストライド共に市民ランナーでも無理な数字ではありません。短い距離なら、ですが。
何故速いペースをキープできないのか?
上級者ランナーなら1kmあたり4分15秒ペースで走るのは難しいことではありません。このペースを42.195kmキープするのが難しいのです。キープできない理由を考えてみましょう。
呼吸が乱れてくる
1つ目の問題は呼吸の乱れです。4分15秒ペースをキープして呼吸が乱れてくるとペースを落とすことになります。呼吸の乱れは序盤で起こる場合と終盤で起こる場合があります。序盤から呼吸の乱れはペースの速さに身体が対応できていないのが原因です。
終盤の呼吸の乱れは、姿勢、フォームが崩れ余計な負荷が起こっている場合が考えられます。熱中症などで体温が上がった場合も呼吸が乱れます。
筋肉疲労で身体が動かなくなる
2つ目の問題は筋肉疲労です。ランニングは同じ動きを何度も繰り返す競技です。フルマラソンではストライドが1.36mのランナーは31,026回の着地を繰り返す計算になります。筋肉に疲労が溜まると動き難くなりペースが落ちてくるのです。
エネルギーの枯渇で身体が動かなくなる
3つ目の問題はエネルギー切れです。走ることで体内に蓄積された糖や脂肪がエネルギーとして使われます。身体に蓄積された糖が残りが少なくなると脳から身体の動きをストップする指令が出され、ペースが落ちます。
呼吸を乱れないようにするには?
呼吸が乱れるのは体内でエネルギーを作るために必要な酸素が不足してくるからです。酸素が不足する流れを見ていき、改善方法を考えていきましょう。
呼吸が乱れるのはエネルギーを作るための酸素が足りなくなるから
走るためのエネルギーは身体の中で作られます。身体に蓄積された「糖」と「脂肪」をベースに酸素を使ってエネルギーが作られるのです。速いペースで走ると、ゆっくりペースに比べて1秒あたりに必要なエネルギーが多くなります。
速いペースで走ると呼吸が苦しくなる流れです。
- ペースが上がると走るために必要な1秒あたりのエネルギー量が多くなる
- 必要なエネルギーをもっと多く作るために酸素が必要になる
- 呼吸で酸素を取り入れる量を多くしようとする
- 必要な呼吸の回数が増える(呼吸が苦しくなる)
呼吸が乱れないようする効果的なトレーニング
ペースを上げても呼吸が乱れないようにするには3つのアプローチがあります。1つ目は心肺機能を鍛えること。2つ目はエネルギーを作り出す細胞を活性化すること。3つ目は毛細血管を発達させること、です。
心肺機能を鍛える
心肺機能を鍛えることで、呼吸で取り込む空気の量が増えるので摂取できる酸素の量も増えます。心臓から血液に溶け込んだ酸素を細胞へ送り出せる量も増えます。心肺機能を鍛えるトレーニングは高い心拍数を維持するトレーニングです。
- インターバルトレーニング
- レぺテーショントレーニング
エネルギーを効率よく作れる身体にする
糖や脂肪を酸素と結び付けてエネルギーを作り出すのは、細胞の中のミトコンドリアという組織です。ミトコンドリアが活性化すると作られる酸素の量が増えます。ミトコンドリアを活性化させるトレーニングはきついと感じるトレーニングです。
- 坂道インターバルトレーニング
- 強度高めのペース走
毛細血管を発達させる
毛細血管が発達すると細胞に行き渡る酸素の量が増えます。行き渡る酸素の量が増えると多くのエネルギーを作ることができます。毛細血管を発達させるために有効なトレーニングはゆっくり長く走るトレーニングです。
- LSD
必要なエネルギーを少なくする効果的なトレーニング
走るときに必要なエネルギーを少なくするのも有効な方法です。効率的なランニングフォームは必要なエネルギーが少なくて済みます。有効なトレーニングは無駄な動きをしない、無駄な力を使わないように意識するトレーニングです。
- 動き作り
- 体幹トレーニング
- 流し(ウインドスプリント)
筋肉の疲労を抑えるには?
筋肉は使い続けると疲労します。疲労を抑えるには、筋肉の負荷を少なくするフォームを身に付ける、筋肉を負荷に慣れされるトレーニング行う方法があります。
着地、加速の繰り返しが筋肉を疲労させる
フルマラソンでは2~3万回の着地が行われます。ランニングでは着地で衝撃を受ける際に多くの力を使います。着地では脚に体重の3~4倍の力をかかると言われています。一定のペースで走るには身体を推進させる力も必要です。
筋肉疲労を抑える効果的なトレーニング
フォーム改善
フォームをより効率的に改善すると、着地の衝撃を少なくし、少ない力で推進力を得られるようになります。効果的なトレーニングは
- 動き作り
- 体幹トレーニング
- 流し(ウインドスプリント)
です。フォームを意識し着地衝撃を推進力に変えられるようになると良いです。
長時間の運動
人間の身体は適切な負荷を掛けると、負荷に対応出来るように発達します。長い時間走ることに慣れるには長時間身体を動かすトレーニングが必要です。効果的なトレーニングは
- LSD
- ロングジョグ
- ロング走
です。
セット練習
長い時間のトレーニングが難しい場合はセット練習で負荷を掛けるトレーニングおすすめです。
- インターバル+ペース走
- 坂道走+ジョグ
などです。高い負荷を掛けるので故障などには注意が必要です。
エネルギーの枯渇を防ぐには
フルマラソンを走りきるために必要な糖分を身体に貯めておくのは難しいです。可能な限り貯めておき、走りながら補給することになります。トレーニングを積めば脂肪の燃焼効率を上げて、少ない糖でも長い距離を走れるようになります。
脂肪燃焼効率が上がればエネルギー切れのリスクを減らせます。
エネルギーを身体に貯めておき、適宜補給する
エネルギーを身体に貯めるにはレースの3日前位から炭水化物を多くとる、カーボローディングが有効です。カーボローディングは適切な基準が明確ではなく、個人差もあります。炭水化物を多くとる程、蓄積されるエネルギーの量は増えるのですが、とり過ぎると体重が増えます。
レース前に体重が増え過ぎると、レース当日のパフォーマンスが低下します。エネルギーの蓄積を抑えて、エネルギー切れを防ぐには、脂肪をエネルギーに変えやすい身体を作るトレーニングが有効です。
エネルギーの枯渇を防ぐ効果的なトレーニング
体内の糖が少ない状態で走る
体内の糖分が少ない状態で走ると脂肪をエネルギーとして使う能力が高まります。脂肪は体内に豊富に蓄積されているので、脂肪を走るためのエネルギーに変えられる身体にすると良いです。
- 朝ラン(軽い水分補給だけして食事はとらないで走る)
- 空腹ラン(食事の前の時間帯に走る)
糖の補給なしで長時間身体を動かす
ロング走で補給を水みのにするのも効果的です。給食をとらない方法も脂肪を走るためにエネルギーに使いやすい身体になります。但し少しづつ身体を慣らしていかないとロング走の途中でエネルギー切れになるので、注意が必要です。
- ロング走(水のみ適切に補給)
まとめ
「速く」「長く」走れるようになるためのトレーニング方法は雑誌、本、ウエブに載っています。トレーニングの意味を知ることで、必要なトレーニングを自分に合うようにアレンジして行うことができます。効果的なトレーニング方法を自分で考えることは大切です。
しゅうぞう
最新記事 by しゅうぞう (全て見る)
- ランニングは歳をとっても若いランナーに勝てる?その理由は? - 2020年5月1日
- みんなで走るときは仕切る人が必要、グループランニングを計画するコツを教えます - 2020年4月30日
- 屋内でできるランニングトレーニング - 2020年4月29日