心肺機能の強化はランニングパフォーマンスアップへの定番トレーニングになっています。心臓、肺の機能が上がると筋肉に送る酸素の量が増え、筋肉が動くために必要なエネルギーを効率的に作れるようになります。
多くのランニングクラブや練習会でも心肺機能を高めるトレーニングが行なわれています。中には闇雲に苦しいトレーニングをすれば心肺機能が向上すると考えているトレーナーやコーチもいるようです。無理なトレーニングは身体への負担が大きく故障の原因にもなります。
この記事は心肺機能強化について解説をし、効率的なトレーニング方法を紹介しています。
運動とエネルギーの基礎知識
心肺機能強化について少し詳しく見てきましょう。心肺機能強化の意味を理解するとトレーニングに対する意識が変わります。
- ランニングをするにはエネルギーが必要
- エネルギーを作るには酸素が必要
- 酸素(血液)を筋肉に送り込むのは心臓の役目
- 酸素を取り込むのは肺の役目
- 何故速く走ると苦しくなるのか?
ランニングにはエネルギーが必要
ランニングをするにはエネルギーが必要です。身体を動かすエネルギーは主に筋肉で作られます。
エネルギーを作るには酸素が必要
エネルギーの元になるのは身体に溜め込まれた脂肪や糖です。脂肪や糖を身体を動かすエネルギーに変えるには酸素が必要です。酸素をエネルギーを作る工場である筋肉へ運ぶのは血液の役目です。
酸素(血液)を筋肉に送り込むのは心臓の役割
酸素が溶け込んだ血液を筋肉へを送るのは心臓の役割です。運動量が増えると多くのエネルギーが必要になり、多くの酸素も必要になります。多くの酸素(血液)を送るために心臓は心拍数を速くします。
酸素を取り込むのは肺の役目
エネルギーを作るために必要な酸素を取り込むのは肺の役目です。口や鼻から空気を取り込み肺に取り入れて酸素を血液に溶かし込みます。多くの酸素(空気)を取り込むためには呼吸の回数が増えます。
何故速く走ると苦しくなるのか?
運動とエネルギーと酸素の関係がわかると、速く走ると苦しくなる原因が分かります。速く走ると運動量が増えるので必要なエネルギーも増えます。エネルギーを多く作るには多くの酸素が必要です。
・肺はたくさんの空気を取り込もうとする
・心臓はたくさんの血液を送り出そうとする
これで呼吸が速くなり、心拍数が増えます。これが苦しく感じる原因です。
心肺機能強化によるランニングへの効果
心肺機能が強化されるとランニングにどんな影響を及ぼすのかを見ていきましょう。
- 一度の呼吸、心拍で運べる酸素の量が増える
- 短い時間で多くのエネルギーが作れる
- 速く走っても苦しくない
- 楽に走れるペースが上がる
一度の呼吸、心拍で運べる酸素の量が増える
呼吸機能が強化されると一度の呼吸で多くの空気を取り込むことができます。心臓の機能が強化されると一度に送られる血液の量が多くなります。その結果一度の呼吸、心拍で運べる酸素の量が増えるのです。
短い時間で多くのエネルギーが作れる
筋肉に送られる酸素の量が増えると作られるエネルギーの量も多くなります。単位時間に作られるエネルギーの量が増えることになります。
速く走っても苦しくない
速く走るにはより多くのエネルギーが必要になります。エネルギーが足りなくなるともっと多くのエネルギーを作る必要があり、多くの酸素が必要になり呼吸数、心拍数が上がります。心肺機能が上がり、一度の呼吸、心拍で運べる酸素の量が多くなり、エネルギーを多く作れれば、エネルギー不足はなくなるので走っても苦しくないのです。
楽に走れるペースが上がる
苦しくなれば、走るペースを上げることが容易になります。つまり速く走れるようになるのです。
ランニング中級者からやってほしい心肺機能強化方法
心肺機能を強化するには最大心拍数の95~98%の負荷をかけるのがポイントです。この負荷はとてもきついので長い時間継続ができません。
- 心肺機能を上げるトレーニング
- 実践!心肺機能を向上させるインターバルトレーニング
心肺機能を上げるトレーニング
最大心拍の95~98%で走ることが心肺機能の強化には必要です。ここまで心拍数を上げるトレーニングはとてもきつく長い時間続けることができません。心拍数を上げる急走と心肺を休める緩走を繰り返すインターバールトレーニングは心肺機能を強化するトレーニングに最適です。
最大酸素摂取量の95~100%が出現する心拍数は最大心拍数の95~98%(たとえば最大心拍数が190拍/分なら180~186拍/分)です。
引用元書籍:ランニング学会編「ランニングリテラシー」
実践!心肺機能を向上させるインタバールトレーニング
インターバルトレーニングは負荷の高いトレーニングなので、適切な方法を行うことが大切です。
インターバルトレーニングとは?
インターバルトレーニングとは「急走(速いペースで走る)」と「緩走(ゆっくりペースで走る)」を繰り返すトレーニングです。緩走の代わりにウォーキングや休憩を入れることもあります。急走と緩走で1セットです。
トレーニングの目的によって、急走の設定(距離、ペースなど)と緩走の設定(時間、ペースなど)を組み合わせます。セット数もトレーニングの目的やランナーの走力によって決めます。
距離は1kmが最適
心肺機能を強化するには1kmインターバル走が最適です。最大心拍の95~98%を維持できる丁度良い距離です。
急走は5kmを全力で走れるペース
1kmインターバルはペースで管理するトレーニング方法がおすすめです。1kmインターバルの最適なペースは5km全力で走った時の1kmあたりのタイムです。5kmを25分50秒で走れる人は5分10秒が1kmインターバルの最適なペースになります。
緩走は120秒ジョグ
急走の後の緩走は120秒のジョグが良いですが走力に合わせて±30秒で調整してください。緩走で心拍数が下がり切ってしまうと急走で心拍数を上げるために時間がかかってしまいます。緩走が短いと身体が回復しません。
インターバルトレーニングでの走行後の休息時間は、走行時間の50~90%が一般的です。
引用元書籍:ランニング学会編「ランニングリテラシー」
本数は3本から始める
最大心拍の95~98%をできるだけ長い時間負荷を掛けると効果が高くなるのですが最初から無理をしてはいけません。1kmインターバル3本から始めましょう。インターバルというトレーニングに慣れることから始めます。最初の1本は設定ペースより抑え目に入るのが良いです。
慣れてきたら本数を増やすのですが、1週間の走行距離の8%を上限にするのが良いです。1週間に50kmを走るランナーは4km(1km×4本)が丁度良いです。
他のトレーニングでの走行時間も加えて1週間の走行距離の8%がすすめられています。
引用元書籍:ランニング学会編「ランニングリテラシー」
心肺機能強化トレーニングの注意点
心肺機能強化を続けていけばどんどんランニングのタイムが上がってくると思い頑張ってトレーニングをしているランナーに注意点があります。
- インターバルトレーニングは多くてもの週に1回
- 適切な負荷(ペース)で行う
- レーニングはトータルバランス
インターバルトレーニングは多くても週に1回
頑張った分だけ成果は出るのですが、疲労を溜め過ぎてトレーニングの質が落ちたり、疲労が元で故障をしてまうのは本末転倒です。適切な量のトレーニングを積み重ねるのが効果的なトレーニングです。インターバルトレーニングは負荷が高いので多くても週1回にしましょう。
適切な負荷で行う
インターバルトレーニングは苦しい思いをすれば速くなると思っているランナーも多いですが、トレーニングは適切な負荷で行うことが大切です。負荷とは距離、ペース、本数、休息の組み合わせで決まります。無理な負荷は故障の原因になります。
トレーニングはトータルバランス
心肺機能を強化すればタイムが伸びてゆくと考えて、インターバルトレーニングを好んで行なうランナーがいます。ランニングのトレーニングはバランスよく行なうのが大切です。インターバルトレーニングはランニングトレーニングの一部です。
ランニングパフォーマンスアップのトレーニングは
- 長い距離に慣れる
- 良いフォームで走る
- レースペースに慣れる
- 筋力強化
- 心肺機能強化
などです。
まとめ
心肺機能強化にインターバルトレーニングは有効です。トレーニングの効率を考えると1kmインターバルが心肺機能強化には適しています。インターバルトレーニングは走力に合わせた適切な負荷があります。無理な負荷をかけると疲労が大きくなり、故障の原因にもなります。ランニングのトレーニングはインターバルだけでなく、他のトレーニングもバランスよく行うことが大切です。
しゅうぞう
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