ランニングのタイムアップが目標のランナーはトレーニングを頑張ります。トレーニングを続けていると疲労が溜まります。疲労は食事、睡眠、休息などで回復をしますが、回復しきれなかった疲労は蓄積してトレーニングの妨げになります。無理をしてトレーニングを続けると故障の原因にもなります。
ランニングのパフォーマンスをアップするにはトレーニングと疲労を上手くコントロールする必要があります。この記事は上手く疲労を管理してランニングのトレーニングを充実させるヒントが書かれています。
ランニングによる疲労の原因
疲労については分かっていないことも多く、様々な説が出ては否定されていきます。ランニングをすると疲労を感じることは確かです。疲労のことを知って上手くコントロールしていきましょう。
精神的疲労と肉体的疲労
疲労を感じる場合、精神的疲労と肉体的疲労があります。精神的疲労は仕事などで長時間緊張状態が続くと溜まっていきます。肉体的疲労はランニングなどの運動で溜まっていきます。精神的疲労は身体を動かすことで解消する場合があります。肉体的疲労の回復方法には休息と栄養補給が大切です。
乳酸が疲労を起こすわけではない!?
疲労に関して分かっていないことも多く見解が分かれるものもあります。例えば乳酸です。以前は乳酸は疲労物質と位置付けられ血中の乳酸濃度が疲労の尺度とされてきました。最近の研究では乳酸は高負荷な運動をした時に血中に増えるが乳酸自体は疲労物質では無いという見解が出てきました。一方で乳酸は疲労物質ではないが筋肉を酸性にするので筋肉の動きを鈍くするという意見もあります。
乳酸が疲労を引き起こす、という仮定は否定されつつあるのです。むしろ乳酸が疲労を起こすのではなく、逆に疲労を防ぐ効果もあることがわかってきました。
筋肉痛〈遅発性筋痛〉
一般的に言われる筋肉痛とは正式に遅発性筋痛と言います。負荷をかけすぎると筋繊維の微細な損傷が引き金となって炎症が生じます。損傷した瞬間に痛みは生じないのは、筋繊維自体に痛み神経が直接接続していないからだと言われています。
代謝産物による筋の酸性化
疲労の主な原因の一つであると言われています。代謝過程で発生する水素イオンの影響で身体が酸性に傾きます。これが疲労の原因の一つです。
筋グリコーゲンの枯渇
運動の種類のところでご説明した、エネルギーをつく過程では糖が必要になってきます。その糖が枯渇することが筋肉疲労を起こす原因の一つです。
それでも肉体的疲労は確実に感じる
疲労の原因は分からなくてもランニングを続けていると身体への疲労感は感じます。疲労感が蓄積すれば身体が動き難くなり思い通りのパフォーマンスが出ません。適切に設定したトレーニング目標ができない要因の一つは疲労です。良いとトレーニングをするためには疲労のコントロールが大切です。
疲労のコントロール方法
疲労を感じない程度のトレーニング負荷ではパフォーマンスアップはわずかです。疲労度が大きいトレーニング負荷はパフォーマンスアップに大きく貢献しますが、疲労が溜まるとパフォーマンスは落ち、悪ければ故障に繋がります。疲労をコントロールしながら負荷の高いトレーニングをできるのが理想です。
一週間単位で疲労をコントロールする
一週間の中で負荷の高いトレーニング(ポイント練習)と疲労を抜くジョグを組み合わせます。ポイント練習の前に疲労抜いて良いポイント練習ができるようにしましょう。
基本的な一週間のメニュー例
週の中にポイント練習を2回入れ、疲労抜きのジョグを入れます。一般的な一週間のトレーニングメニューです。ポイント練習の翌日を疲労抜きジョグにして、翌々日を休息にしても良いです。
- 日曜日 ロング走(ポイント練習)
- 月曜日 休息
- 火曜日 ジョグ
- 水曜日 スピード練習(ポイント練習)
- 木曜日 休息
- 金曜日 ジョグ
- 土曜日 ジョグ
疲労を抜いてポイント練習の質を高めることが大切
ポイント練習を充実させることがランニングパフォーマンスアップの鍵になります。ポイント練習を充実させるにはポイント練習までに疲労を抜いておくことが大切です。平日忙しいと土日に連続してポイント練習を入れるランナーもいますがおすすめできません。
疲労が抜けなければポイント練習をスキップする
疲労が抜けていない状態で無理に練習しても良い成果は得られません。疲労が抜けていないと感じたらポイント練習をジョグに気に切り替えたり、休息にしても良いです。
一ヶ月単位で疲労をコントロールする
フルマラソンのトレーニングは一年を通じて期分けをし、目標レースの3ヶ月前から本格的なフルマラソンのトレーニングを始めるのが一般的です。この流れの中で1ヶ月単位で疲労をコントロールして質の高いトレーニングするのが効果的なトレーニングになります。
4週間を一つのサイクルにする
4週間で一つの大きなサイクルにして山を2回作りながら、疲労を抜く週も入れます。疲労が大きければ4週目はポイント練習を入れないで休息を多めにしても良いです。
1週間目に小さな山を作る
2つのポイント練習を適度に負荷を多めにします。
2週間目は少し量を抑える
ポイント練習のどちらかを軽めにします。ロング走の負荷を低めにするのがおすすめです。
3週間目に大きな山を作る
ポイント練習で長めのロング走を入れると負荷が高くなります。少し疲労が残った状態でスピード練習を入れてみます。疲労の具合をみて負荷の程度を決め、故障には十分注意してください。
4週間目は疲労を抜く
疲労が大きければポイント練習を1つにする、あるいはポイント練習を無しの週にしても良いです。次の4週間サイクルに向けて疲労を抜いて身体をリセットさせましょう。
疲労を量る
肉体的な疲労を計るのは難しいです。幾つかの方法を紹介しますので試しながら自身の疲労管理の方法を見つけてください。
身体の感覚
激しいトレーニングをした翌日は疲労感を感じることが多いです。仕事が忙しい方は肉体的疲労と精神的疲労のどちらなのか分からなくなるケースも多いです。
ウォーミングアップをして少し走り出したら段々と身体が軽くなる場合は精神的疲労の場合は多いです。逆に身体の重さが取れない重さが増してゆく場合は肉体的疲労の場合が多いです。
安静時心拍を比べる
朝起きたばかりの安静時心拍を毎日とることで身体の疲労状態の目安になります。疲労が蓄積すると安静時心拍が高くなります。差の出方には個人差があるので記録をとり続けて自分のパターンを見つけてください。
安静時心拍による疲労の計測・記録
- 朝起きて直ぐに1分間の心拍を計る
- 15秒を4倍、30秒を2倍にしても良い
- 毎日計測し、記録をつける
- トレーニング量、体幹的な疲労度と合わせて記録すると疲労度の傾向が分かる
トレーニングの量と質から疲労度を測る
トレーニングの量と質を記録して、蓄積状況から身体の疲労度を測ります。
- トレーニングの量:距離
- トレーニングの質:ペースなど
を総合的にみて、一日のトレーニングの量と質を評価して溜まった疲労度とします。
(例)サブ4程度の走力があるランナー
トレーニング量の評価
- 10km以下 軽
- 10~20㎞ 中
- 20km以上 重
トレーニングの質の評価
- 6:30/km以下 軽
- 6:30~5:30/km 中
- 5:30/km以上 重
15㎞を5:40/kmのペース走をした場合、評価は「中&中の疲労度」となります。
疲労を回復する
ポイント練習を充実させてトレーニング効果を上げるため、疲労を溜めすぎて故障をしないためには疲労を回復させることが大切です。疲労回復方法もいろいろな情報、説が出ています。自分に合った方法を見つけてください。
休息
身体を動かさないで疲労の回復を待ちます。筋肉をゆっくりと休めます。
アクティブレスト
ある程度身体を動かした方が疲労が早く回復する場合もあります。軽い運動は血行を良くし、固まった筋肉をほぐします。サブ4程度のランナーであれば5㎞程度の軽いジョグがアクティブレストになります。
食事
食事も疲労回復に大切です。栄養バランスを良く摂取し、足らない分をサプリメントで補います。
睡眠
睡眠は疲労回復に大切です。必要な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には6時間必要とされています。睡眠時に身体から出る成長ホルモンは疲労回復に関係があるとされています。質の良い睡眠をとることが大切です。
入浴
入浴は血行を良くします。疲労の原因の一つは血行不良ですので、入浴による血行促進は疲労回復に効果があります。入浴と水風呂を交互に入る交代浴は更に血行促進に効果があります。
スーパー銭湯など水風呂がある施設に行った際に試してみてください。
サプリメント
疲労を抜くと言われるサプリメントは巷にあふれています。一般的なクエン酸をベースにしたもの、プロテイン、BCAAなど筋肉の修復をメインにしたものなど様々です。基本は食事による栄養補給です。サプリメントは補助食品として試してみて効果を感じられたものを選んでください。
疲労と間違えやすい症状
休息をとっても疲労が回復しない場合は、運動による疲労とは別の原因を疑ってみましょう。
貧血
貧血はランナーがなりやすい疾患です。貧血の初期は何となくパフォーマンスが上がらない程度ですが、悪化すると少しペースを上げるのも辛くなります。軽度の貧血は食事や市販のサプリメントで改善されますが、重くなると病院で造血剤を処方してもらう必要があります。
体調疾患
身体がだるくて動かない症状は体調の疾患である可能性があります。身近なところでは風邪ですが、風邪は症状が分かりやすく身体を休めて栄養を摂れば回復してきます。だるい症状が長引く場合は病院で検査をしてもらうのがおすすめです。
エネルギー切れ
ダイエットで食事を制限している方は身体の糖が極端に少なくなっているケースがあります。糖が枯渇してくると脳は身体に対して糖の消費が大きい運動を止めるように命令をし身体がだるくて動かなくなります。身体がだるく感じ動かなくなります。ダイエットをしている人もランニングの前には適度な糖を摂取しましょう。
まとめ
ランニングのパフォーマンスアップと疲労の蓄積は表裏一体の関係です。パフォーマンスを上げるには身体に負担のかかるトレーニングが必要で疲労が溜まります。疲労が溜まりすぎると良いトレーニングができずパフォーマンスが上がりません。
トレーニングで溜まった疲労を上手く回復させ、次のトレーニングにつなげてゆくのが良いトレーニングになります。
しゅうぞう
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